池田模範堂の池田欣史専務取締役
池田模範堂の池田欣史専務取締役
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 虫さされなどのかゆみ止め薬「ムヒ」シリーズを手がける池田模範堂(富山県上市町)。同社でCIO(最高情報責任者)相当職を務めるのは池田欣史専務取締役だ。池田専務は、商品開発に携わる部下たちに「顧客に刺さるキャッチコピー作りにこだわれ」と繰り返し語っている。競合他社が真似したくなる、「どんな顧客のための商品なのか」が明快なコピーを作れば、ヒットの確率が大幅に高まると見ているからだ。そこで開発プロジェクトごとに、商品や症状に関連するキーワードを利用するグループウエア「サイボウズ ガルーン」やファイルサーバーに蓄積。それを参考資料にしながら、開発メンバー同士が顔を突き合わせて議論することを池田専務は奨励している。

 また、近年はこうした商品開発に伴って発生する商標などの知的財産情報を管理する体制の整備に力を入れてきたと池田専務は明かす。背景には、同社が冬期をターゲットにした新商品を次々と発売していることがある。夏場に強いムヒに匹敵する売り上げを、冬にも稼ぎ出そうという狙いだ。そして「練り上げたコピーを他社に真似されないために、知財情報の管理が欠かせない」(池田専務)。そこで知財情報管理のスタッフの育成や、IT(情報技術)環境の整備を目指して奔走している。そんな池田専務だが、実は以前に知財を巡って苦い経験を味わったと打ち明ける。2005年に発売した乾燥による肌のかゆみを治療する薬「ムヒソフトGX」に関するものだ。

 同商品は「かゆみ肌」というキャッチコピーを提示して顧客の注目を集め、販売好調だった。ところが、しばらくすると大手製薬メーカーが同じかゆみ肌というコピーを使って類似商品を販売し始めた。「大手と訴求ポイントが一緒になってしまうと我々では太刀打ちできない」(池田専務)。結果、ムヒソフトGXの販売量の伸びに急ブレーキがかかってしまった。

 しかもそれだけでは済まなかった。池田専務らが慌てて「かゆみ肌」を商標登録しようとしたところ、後発の競合他社が先に申請していたのである。自社で作り上げたコピーが利用できなくなる寸前に追い込まれたわけだ。その後の対応で最終的には同社の商標として認められたものの、証拠の収集などで相当な労力を強いられた。「市場に存在しない商品を打ち出す際は、キャッチコピーという情報が重要なことと、その情報を守る体制が必要なことを痛感した」(池田専務)。

 こうした教訓を部下たちとのコミュニケーションに生かしてきた。9月に発売したすね専用の治療薬「リペアクト」では、「うろこ肌」というキャッチコピーを作り上げた。同社では5億円がヒットの目安というなか、10億円の大台を売り上げ目標として掲げている。

Profile of CIO

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞、読売新聞、DIME、BE-PAL
◆最近読んだお薦めの本
・『謎解きはディナーの後で』(東川篤哉 著、小学館)、『鬼平犯科帳』シリーズ(池波正太郎 著、文春文庫)
◆ストレス解消法
・休日は妻とジムでバイクを漕ぐなどして汗をかいています。出張が多いため、家族と一緒に過ごす時間を作っています。