日本企業による中国へのオフショア開発規模が拡大するなか、活用するためのポイントが見えてきた。杭州東忠科技有限公司は杭州市に拠点を置くオフショア受託企業。アイシン精機など日本企業との合弁会社を設立してオフショア開発に取り組んでいる。同社の丁偉儒社長はITベンダーのアウトソーシングの活用には課題があると説明する。

(構成:西 雄大=日経コンピュータ

杭州東忠科技有限公司 社長 丁偉儒氏
杭州東忠科技有限公司 社長 丁偉儒氏

 我々は中国浙江省の杭州市で日本向けのオフショア開発に取り組んでいる。ITベンダーのほか、アイシン精機やイオンといったユーザー企業とも合弁会社を設立している。我々の資本は20%以内におさえている。やはり資本関係がないと出向といった人的交流や業務指示が円滑にうまく進まない。

 日本のITベンダーは中国への発注方法が上手ではないように感じる。ユーザー企業のほうが上手だ。ITベンダーの課題は、アウトソーシング企業に対して得意分野を委託しているように思う。目的を明確にすべきだ。

 本来アウトソーシングとはコスト削減が目的である。不得意な分野か自社のコア業務でない業務を外部委託するはずである。

 ユーザー企業にとって情報システムは不得意分野であることが多い。不得意な分野をアウトソーシング企業へ委託すると結果を重視する。コスト削減金額といった結果を追求するため、短期間で効果を生み出しやすい。

 一方でIT企業は得意分野を委託してしまう。コスト削減効果に加えて、委託先の技術者の能力まで求めてしまう。自社の技術者と同等のレベルを要求し、中国の技術者に能力の向上を求めることすらある。

 まだ中国の技術者は管理能力も業務知識も日本の技術者のレベルには追いついていない。もし同じ能力を身に付けてしまえば、低コストを武器に市場を攻められる可能性すらある。日本のIT企業は自社の競争相手を育ててかねないことに気付いていない。

 日本のIT企業はグローバルで分業する体制を構築するために、自分たちの不得意な領域を再確認すべきだ。中国国内市場における新規顧客の開拓なのか、技術者の労務管理なのかといった観点で見直す必要がある。

 我々は杭州以外にも開発拠点を中国国内に杭州以外にも増やす予定だ。日本のIT企業には中国市場における戦略的な拠点として活用してほしい。(談)