生産管理には「プッシュ(Push)」と「プル(Pull)」という用語がある。日本経営工学会の『生産管理用語辞典』では次のように定義されている。

  • プッシュシステム:あらかじめ定められたスケジュールに従い、生産活動を行う管理方式(図1上)
  • プルシステム:後工程から引き取られた量を補充するためにだけ生産活動を行う管理方式(図1下)
図1●プッシュシステムとプルシステム
図1●プッシュシステムとプルシステム
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 ここに材料を加工して部品を作り、部品を組み立てて製品を作る工場があるとしよう。プッシュシステムはいわゆる計画生産方式である。まず組み立て計画を立てたうえで、組み立てに必要な部品の加工計画を立てる。

 一方、プルシステムの代表格はかんばん方式である。組み立てに必要な部品にかんばんを付けてあらかじめ数日分用意しておく。部品を使うと部品からかんばんを外して、かんばんに従ってすぐに作って補充する。部品在庫を少なくするには、現場改善で部品の加工時間を短くする必要がある。加工時間が長いと、補充されるまでの間に使われる部品を多めに用意しないといけないからだ。

 ところでこの「プル」について上記と違った使い方がされることがある。お客様の注文前に作るか、注文後に作るかで見込み生産と受注生産に分かれる。受注生産はお客様の引き(プル)に従って作るので、受注生産はプルというのだ。

 単に用語の定義だが、もし異なった「プル」の考えを持った人たちが集まって、一緒に生産の仕組みを見直すと、色々な問題が起こりかねない。次にG社のケースを紹介する。