いよいよ職場におけるメンタルヘルス対策について説明をするパートに入る。それに当たって、これからの後半部分のだいたいの内容を先に説明しておこうと思う。

 図1はメンタルシック(心の病)の主な原因ごとに対策の中心を担う人々を絵で表したイメージ図だ。 前半の過去6回では、主に「第4原因層」の社会や経済の環境変化とその対応方法や、メンタルヘルスに関する基本的な知識、脳や心の仕組みを説明した。

図1●メンタルシック(心の病)の対策の担当図
図1●メンタルシック(心の病)の対策の担当図
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 後半部となる今回以降では図1の(1)職場環境(2)認知(受け止め)の歪みの改善方法を中心に、(3)家族環境や政府の役割である社会環境についても少し触れる。

対策に関わるのは人事や医療従事者だけではいけない

 今までのメンタルヘルス体制の構築の主体は、企業の人事や総務担当者と医者や看護師などの医療従事者が中心だった。しかしメンタルシック(心の病)を低減させるためには、本人を含め職場や関連するメンバー全員で問題を正しく理解し、連携しなければ、実効性のある施策にはならないということを、理解する必要がある。

 もちろん専門家の支援も必要だ。図1の左上に医師の絵があるのは、「脳の情報伝達メカニズムの不調」の治療は主に投薬など(注)によって行われるため、医師が中心に担うものとした。

(注):最近米国では脳への磁気刺激療法も効果を上げているとのことだが、まだ日本では一般的な治療法として普及はしていない。

 同じように、「認知(受け止め)の歪み」では、「認知行動療法」によって治療を行う医師もいれば、研修やトレーニングを行うカウンセラーやEAP(従業員支援プログラム)企業もある。セルフトレーニングも大切な予防法でもあるから本人も含めた。

 一方で、これから重点的に述べていく「職場環境」の改善に関しては、一般的にラインケアの要である上司(中間管理職)が中心だと思われているが、上司自身が上下組織のあつれきのなかでメンタルシックを発病する場合も多いので、上司・同僚・本人とした。

 また、経営者はラインケアに通常は含められていないが、職場環境は会社の文化そのものと言っても過言ではなく、経営者の性格や意思が大きく反映されるので、一番のキーパーソンとして加えている。