これまでに紹介した4人は、自ら道を切り開いてきた。そこまでできる中高生は少ないかもしれない。だがITになじみ、IT活用のセンスを持つスマホ世代は、少し背中を押してあげれば優れたIT人材となる可能性が十分ある。才能開花のきっかけ作りを目指す取り組みが始まっている()。

図●次世代IT人材の育成に向けた主な取り組み
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アプリ開発を無料で教育

 「よっしゃ、できた!」──。4月下旬の休日、秋葉原にあるデジタルハリウッド大学。中高生約30人が歓声を上げながらPCに向かう。iPhone向けアプリ開発の作り方講座のひとコマだ。授業料は無料で、毎月開催している。

 講座を企画するピスチャーの水野雄介社長は、「有料だと親に相談する必要が生じる。興味を持ったときにすぐ一歩を踏み出してもらうために無料にした」と説明する。水野社長は開成高等学校などで非常勤講師を務めていた経験を持つ。プログラム開発にはエラーがつきもの。この経験を通じて、「イライラをコントロールできる忍耐力や自己解決能力が身に付く」と、水野社長は話す。

 無料とはいえ、内容は本格的だ。1日かけてスマホで動く時計などのアプリを開発する。アプリ開発の工程を5段階に分け、その手順を説明して、開発を実践する。アップルの開発ソフトである「Xcode」の上で、プログラムを開発言語「Objective-C」を使って書く。

 作ったアプリはお土産として、自分のスマホに入れてもらえる。参加者の一人である中学2年の男子学生は「参加するのは2回め。アプリがスマホで動いたときは感動する」と、嬉しそうに話す。