前回に続き、当たり前のようにITを使いこなす「スマホ世代」の若者を紹介する。その高いITスキルや行動力は、大人の想像を超える。

高校よりネット企業で勉強
福森 匠大(15)

 2012年3月に中学を卒業した福森匠大は、高校に進学しなかった。代わりに選んだのは、オンラインレシピサービスのクックパッドでのアルバイト。宇都宮からオフィスがある東京・白金まで2時間かけて週3回通い、エンジニアとして働いている。

 福森はその理由を「高校に通うよりも勉強になるから」と話す。「趣味でプログラムを書くのと業務としてやるのでは、やはり違う。学ぶことはたくさんある。今はコードの書き方などを社員から色々教えてもらえる」。高校には行かないが、高等学校卒業程度認定試験を取得して大学へ進学するつもりだ。

(写真:富田 昌彦)

 福森が気に入っているのは、サービスの新規開発ではなく、開発者を支援するツールづくりなど裏方の仕事。「皆が気持ちよく開発できる環境づくりが自分には向いている」。

 2011年2月には、日本発のプログラミング言語「Ruby」の最年少コミッターに選ばれた。機能の提案や不具合の修正などの実績が認められた。コミッターはRubyの仕様変更の権限を与えられた開発者。福森は現在74人いるコミッターの一人として活躍する。

 Ruby開発者のまつもとゆきひろは「やる気と実現力が素晴らしいと思う。日本を代表するようなプログラマーになってほしい」と福森にエールを送る。

200人のSEを交通整理

 東日本大震災でも福森は活躍した。震災関連情報を集約したsinsai.infoの開発にボランティアとして参加。ピーク時に200人を超えるエンジニアの“交通整理”役を買って出た。

 sinsai.infoではこれらのエンジニアがネットワーク越しに、機能の追加や改変を進めた。当初は、追加・改変したプログラムをサーバーにデプロイ(展開)する手順を決めておらず、エンジニアが個々のやり方で進めていた。これでは混乱を招くだけでなく、不具合が発生した場合に問題の検証に時間がかかる恐れがあった。

 そこで福森は率先して、デプロイの作業手順を決め、エンジニアに手順を守るよう依頼した。sinsai.info代表の関治之は「年齢を聞いたときは驚いた。状況を冷静に把握していた」と話す。

 こうした取り組みが評価され、福森は日本OSS推進フォーラムから日本OSS奨励賞を受けた。オープンソースソフトの発展に貢献した個人を表彰する制度。「大学卒業までは日本にいる。それ以降はまだ決めていない。そのときに一番面白い言語のコードを書きたい」と屈託のない笑顔で話す。