セールスフォース・ドットコムは創業以来、クラウドコンピューティングに特化したサービスビジネスを一貫して展開してきた。ユーザーは世界で10万社を超える。国内でも米フォーチュン誌の世界企業ランキング500社に含まれる日本企業70社のうち80%以上の企業に利用をいただいている。クラウドサービスは企業規模を問わず共通で利用できる基盤を用意しており、日本でも大企業から中小企業まで数多くの企業が当社のクラウドサービスを活用している。

 クラウドサービスの特徴は、システムの規模を問わず短期間で構築できる点にある。日本生命やアスクル、キヤノンマーケティングジャパン、日本郵政グループなどが当社のクラウドサービスを採用し、大規模なシステムを短期間で構築し、開発期間の短縮やコストの削減、生産性向上といった様々なメリットを得ている。

フィードバックを得ながら開発が可能 期間3分の1、コスト5分の1に

セールスフォース・ドットコム 代表取締役社長 兼 米国セールスフォース・ドットコム EVP(上級副社長) 宇陀 栄次 氏
セールスフォース・ドットコム
代表取締役社長 兼
米国セールスフォース・ドットコム
EVP(上級副社長)
宇陀 栄次 氏

 最近の事例の1つとして、アスクルはクラウドサービスと、工程の早い段階からユーザーのフィードバックを得ながら進めるアジャイル開発の採用により、大規模なコールセンターシステムを4カ月で立ち上げた。旧システムと比べ、導入期間を3分の1に、導入コストを5分の1にそれぞれ抑えられた。

 このようにクラウドサービスがユーザー企業に与えるメリットは大きい。要件が多少曖昧でも着手でき、プロジェクトの遅延を避けることができる。また、標準機能で対応可能な業務範囲が広く、新たな機能を柔軟に追加できるほか、カスタマイズが生じた場合でも迅速に対応可能だ。このほか、IT基盤は専門家による24時間365日の監視下にあり、機密性や保全性、可用性、監査性に優れている。アジャイル(俊敏な)開発によって効率的なビジネスが進められるため、パートナー企業にもメリットが大きい。

 クラウドサービスが企業システムに浸透する一方で、消費者向けITの動向にも目が離せない。1995年にWindows95が登場し、2000年のYahoo!のポータルサイト、2005年のGoogl eの検索エンジン、2010年のAppleのiPadと、5年ごとに新たなメガトレンドが始まり、世の中の動向に大きな影響を及ぼしている。今や消費者向けITは企業にとっても無視できない存在になっており、それを迅速に取り込んでいくことが革新的な企業の条件といえるだろう。セールスフォース・ドットコムは、最新のI T技術を法人向けのサービスとして提供する役割を担っている。主要IT企業やコンサルティング会社と提携や連携しながら、今後もこの方針は変わらない。

業務系システムは現状分析、将来の「見える化」に必要なものとは

 消費者向けITの潮流として、最近、大きな影響力を持ち始めたのがFacebookやTwitterといったソーシャルメディアだ。ここで日々発信される「声」をくみ取り、将来を予測し、新しいビジネスチャンスが生まれる可能性がでてきた。業務系システムからデータを抽出・分析しても、それは過去並びに現状分析にすぎない。近い将来を「見える化」するには、パートナー、ディーラー、サプライヤー、コールセンター、さらには直接お客様からの様々な生の声を吸い上げる必要がある。

 それに伴い、お客様と接点を持つフロントシステムに軸足を置いた新しいシステム体系になっていく。メールなどの社内コミュニケーション、ポータルによる外部コミュニケーションといったプル型情報だけではなく、企業内SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)や顧客向けソーシャルコミュニティーといったプッシュ型の情報も必要だ。当社が提唱するソーシャルエンタープライズはそれを実現する。

●新しいパラダイムのビジネスチャンス
●新しいパラダイムのビジネスチャンス
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 世の中の変化を的確にとらえ、新しいビジネスチャンスを見つけようとすれば、新しい技術やサービスに対する積極さや寛容さ、価値を認める姿勢をこれまで以上に持つべきだ。単にユーザーとしてクラウドサービスを使うのではなく、自分の事業に取り込むことで新しい市場を創造できる可能性がある。日本にはまだまだ大きな成長が期待できる。