情報システムの「アーキテクチャー」にもっと目を向けるべきではないでしょうか。部分最適の積み上げで全体として必要以上に複雑で歪なアーキテクチャーになっているケース、性能問題など保守・運用上に課題を抱えて事業の採算が合わないケース。筆者の周りでもこうしたケースを見聞きすることは少なくありません。また、ビジネス上の本質的な目的を捉え、目覚ましい進化を遂げるハードウエアを活かすのもアーキテクチャー次第だといえます。

 情報システムのアーキテクチャーに責任を持つのはITアーキテクトとされています。その重要性は増していますが、人数が少ないのが実情です。どうしたらなれるのでしょうか。どのように育てたらよいのでしょうか。一つの方法は、ITアーキテクトが実施していることを真似てみることだと思います。

 ITアーキテクトが何かをするのであれば、そこには「成果物」が生まれます。そして成果物には必ず目的があります。そこで本特集では、システム開発のライフサイクルを軸に、ITアーキテクトの作成する成果物に注目し、「それは何のために作るのか?」を明らかにします。連載は全5回で、「要件定義」「基本設計」「詳細設計」「実装・テスト」「保守運用・移行」の5つの工程に分解し、各工程での成果物を軸に、何のために作るのかを説明します。

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