NECグループビジョン2017として「人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現するグローバルリーディングカンパニー」を掲げる。C&Cクラウドを通じ、NECはスマートなインフラを社会に提供することを目指す。

NEC 代表取締役 執行役員副社長 兼 CSO(チーフストラテジーオフィサー) 兼 CIO(チーフインフォメーションオフィサー) 新野 隆 氏
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代表取締役 執行役員副社長 兼 CSO(チーフストラテジーオフィサー) 兼 CIO(チーフインフォメーションオフィサー)
新野 隆 氏

 ビジョンの背景には、社会の長期的変化によって顕在化してきた課題がある。世界の人口は2011年に70億人を突破した後も猛烈な勢いで増え続けており、国際連合と経済産業省は2050年に90億人に達すると予測している。都市部に住む人の割合も現在の約50%が2050年には約70%に上昇すると見込まれ、食料生産に携わる人口が相対的に減る可能性が高い。

 人口の増加に比例し、資源に対する需要も高まる。国連食糧農業機関(FAO)と経済協力開発機構(OECD)は、2012 年から2050年にかけてエネルギー需要は1.8倍、水需要は1.6倍、食料需要は1. 7倍になるという試算を発表している。無駄の削減は人類の生存を左右する最重要課題となってきた。今でも小売りと消費の段階で食料の3分の1を廃棄している。資源・エネルギーだけでなく、今日の世界には解決すべき様々な課題が山積する。その解決の切り札として、今、スマートな社会インフラが大きな期待を集めている。

端末・センサー、基盤、サービス 3つのレイヤーのC&Cクラウド

 では、具体的にどのようなスマート社会インフラがあればよいのか。その1つの回答としてNECが提示するのは、新たな価値を創出するスマート社会インフラC&Cクラウドだ。この社会インフラはクラウド端末・センサー、クラウド基盤、クラウドサービスの3つのレイヤーで構成し、予知・予測、予防・行動支援、どこでも利用可能といった機能を社会、企業、個人に対しリアルタイムに、そしてダイナミックに提供できる。

●C&Cクラウドを実現するNECの主なテクノロジー
●C&Cクラウドを実現するNECの主なテクノロジー
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 C&Cクラウドには、NECの要素技術とシステム技術が生かされている。クラウド端末・センサーのレイヤーでは、NECのパソコン、タブレット端末、スマートフォンが使用できる。産業機器向けにNECが開発・製造するセンサー類も収集したデータをC&Cクラウドに投入するための重要な要素になる。また、クラウド基盤にはM2M(マシン・ツー・マシン)プラットフォームCONNEXI VE、ネットワーク仮想化製品ProgrammableFlow、高速データ処理技術がそれぞれ採用されている。

 C&Cクラウドはすでに効果を上げている。その一例が1990年代からNECが取り組んできた蓄電池の技術とC&Cクラウドを組み合わせたエネルギーマネジメントシステム(EMS)だ。系統側(発電・送電・配電)と需要側(ユーザー)の両方に配置した蓄電システムをクラウドで制御し、生産施設、ビル、住宅など幅広い分野に応用できる。当社は電気自動車の充電時に発生する大きな需要を大容量蓄電池でカバーする仕組みをエネルギー会社や大学と共同で開発し、蓄電・充電統合システムの実証事業に参加している。

ドライバーの動きを検知・解析、居眠り運転を事前に察知

 NECはC&Cクラウドの機能と能力を拡張するため開発作業の継続に力を注いでいる。C&Cクラウドの進化によって、次のような未来が可能と考えている。

 予知・予測の領域では、継続的に収集した動画像をリアルタイムに解析して異常を見つけ出すようなアプリケーションが考えられる。自動車であれば、ドライバーの瞬きの回数、首の角度などの姿勢、ステアリング操作の頻度などを継続収集してリアルタイムに解析し、「このドライバーはうとうとし始めている」といった予兆を自動的に検出して交通事故を未然に防止できる。

 予防・行動支援の領域では、これまで以上に生活に密着したアプリケーションを提供できる。一例を挙げると、バスルームのミラーに仕込んだカメラで利用者の表情を読み取り、クラウド上に保管している生活履歴データと比較して疲労度を判定し、結果をオーグメンティッドリアリティー(AR)技術で、ミラー上にリコメンドとして表示する。また、自動車に無線センサーを内蔵させてクラウドと連携、バッテリーやタイヤの交換時期をドライバーに通知することも実現性が高い。

 このほか、どこでも利用可能というC&Cクラウドの特性を生かし、カメラを通して見ている風景画像にイベント情報などをAR技術によって重ねて表示することも不可能ではない。

 人と地球にやさしい情報社会の実現に向けて、NECは今後も情報の共有化と連携を可能にするC&Cクラウドを推進していく所存だ。