企業の情報システムは様々な課題を抱えている。そのすべてを一気に解決に導くことは困難だろう。CIOやIT部門ができることには自ずと限界がある。その解決策として、当社はコアとしての攻めの課題とノンコアとしての守りの課題を明確に分けて、人材投入(ソーシング)とお金(コスト)を考えることを提案している。その方向性は2つある。

 第1の方向性は、ビジネスに直結する領域へのIT部門社員の投入。業務部門と一体となって働き、直接的に事業に貢献するIT部門を目指す。ビジネス感覚を肌で学ぶことができるので、IT人材の育成手段としても有効だ。

 第2の方向性は、徹底したアウトソーシングの活用である。外部ベンダーのノウハウを活用して安定運用とコスト削減を目指す。最適なファシリティを選択すれば、災害対策としても有効だ。

仮想化の進展に伴ってITインフラの複雑性が増大

新日鉄住金ソリューションズ 代表取締役社長 謝敷 宗敬 氏
新日鉄住金ソリューションズ
代表取締役社長
謝敷 宗敬 氏

 このようなメリットを最大化できるものがインフラ領域のアウトソーシングである。数多くの企業が仮想化技術を取り入れ、統合基盤を構築し、アプリケーションとインフラが結び付いたサイロ型のITからプライベートクラウドへ移行を進めてきた。サーバー台数の削減などのメリットがある一方で、統合基盤上のアプリケーションの種類と数が増加し、仮想化対象がサーバーからストレージやネットワークのレイヤーにも拡大した結果、ITインフラの複雑性が増加し、運用負荷が高まっており、IT部門としては大きな課題になっている。

 新日鉄住金ソリューションズは、その解決策としてコーポレートITインフラアウトソーシングを提案している。コーポレートITアウトソーシングとは、企業のITインフラすべてをアウトソースするコンセプトだが、その中核となるのがクラウドを活用したITインフラサービスabsonne(アブソンヌ)。プライベートクラウドの信頼性、安心感を保ちつつ、リソースの共有化による効率化を実現した。absonneの提供実績は急増している。2010年上半期に比べ、absonneの管理サーバー数は3倍、ストレージ容量は10倍に増えている。

 absonneにはいくつかのサービスモデルがある。サーバーとストレージ、ネットワークのすべてを共有するスタンダードモデルに加えて、サーバーのみを占有するモデル、サーバーとストレージを占有するモデルも用意する。ストレージに関しては、プライムは占有、バックアップは共有という選択も可能だ。

●ITインフラサービスabsonne(アブソンヌ)の概要
●ITインフラサービスabsonne(アブソンヌ)の概要
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学習カーブ効果と規模の経済性、先端技術の導入が強み

 absonneはプライベートクラウドの集合体とみることもできるが、大きな違いもある。それはすべてのITインフラがabsonneの共通アーキテクチャーを持ち、それに基づいたエンジニアリングとオペレーションが行われることだ。

 共通アーキテクチャーは大きなメリットをもたらす。お客様がリソースを増強するたびに、あるいは新規のお客様を受け入れるたびに、1ユニット当たりのエンジニアリングコストは低下する。これは当社エンジニアリングチームのナレッジ蓄積によるところが大きく、学習カーブによる効果といえる。もう1つは規模の経済性である。運用するサーバーやストレージの台数が増えるほど、1台当たりの運用コストは低下する。当社のコーポレートITアウトソーシングにより、お客様のIT部門は運用負荷からの解放だけでなく、プライベートクラウドのメリットを活かしたコスト削減が可能となる。

 コーポレートITインフラアウトソーシングの導入に当たっては、まずはIT資産と運用状況の棚卸しが必要になる。IT資産を調査・分析し、ITインフラをどのように最適化するかを検討する。absonneが適した領域もあれば、既存環境を維持すべき領域もある。それを切り分けたうえで、当社の最新鋭データセンターに移行する。個別システムもすべてデータセンターに移行する。

 運用についても、まずは運用の手順書や運用体制を精査し、最適化に向けた検討が必要だ。固有環境とabsonne環境に分けたうえで、運用のあり方を体系的に整理する。ITインフラを当社データセンターに移行しながら、運用業務も移管する。それにより、運用体制は当社のもとで一元化される。

 当社の強みは、クラウドにおけるエンジニアリングとオペレーションのノウハウにある。これらはabsonneに凝縮されている。運用受託の実績も豊富で、当社は300社を超えるお客様からアウトソーシングを受託している。最新鋭のデータセンターとDR(災害復旧)サイトというファシリティ面での強みもある。

 成長を目指す企業にとって、ビジネス領域への人材シフトは避けられない。その方向に進むために、コーポレートITインフラアウトソーシングは有効な選択肢となり得ると、当社は確信している。

■変更履歴
IT Japan 2012開催当時の社名は「新日鉄ソリューションズ」でしたが、10月1日から「新日鉄住金ソリューションズ」と変わりました。そのため、記事中での表記も新社名に変更しました。 [2012/10/03 12:00]