日本ユニシスはシステムインテグレーター、ITベンダーと呼ばれる。「お客様のために」と考え、システムの開発や運用などを手掛けてきた。その取り組みは「日経コンピュータ」の第16回顧客満足度調査のシステム開発関連サービス(メーカー)部門でNo.1と評価を得た。

中期経営計画は3本柱、共通する「パートナー」

日本ユニシス 代表取締役専務執行役員 平岡 昭良 氏
日本ユニシス
代表取締役専務執行役員
平岡 昭良 氏

 にもかかわらず、IT業界の動向を見ると「このままではいけない」という危機感を抱かざるを得ない。これまでシステム開発はお客様の要求に合致するものをつくるビジネスだった。しかし、事業環境が目まぐるしく変わるようになり、明確な要件を見出しにくくなった。その結果、システムインテグレーターもつくるべきものが分からなくなっている。

 当社は2012年から14年までの中期経営計画を発表した。中期経営計画は3本柱からなり、それぞれ共通してパートナーというキーワードを使っている。背景にはシステムインテグレーター、ITベンダーという立ち位置から一歩踏み出し、お客様からパートナーと呼ばれる存在でありたいという思いがある。

 1本目の柱は「ICTの最適化を実現できるNo.1パートナー」だ。メーカーではない当社は最適な製品や技術を組み合わせて提案できる。確かな選択眼を備えた「目利き」の力に磨きをかけなければならない。また、既存のICTを最適な環境に移行し、最適な状態に維持する必要もある。

 当社が世界で初めてWindowsベースで構築した金融機関向け勘定系システムBankVisionはその象徴だ。堅牢で信頼性が高い点を評価し、メインフレーム上で動く勘定系システムを採用する金融機関は多いが、コストや事業継続性などの課題を抱える。BankVisionはそれを解消した。地銀7行で稼働しており、2行では導入に向けプロジェクトが進んでいる。

 BankVisionの開発に先立ち、当社はいくつかの地方銀行とコンソーシアムを立ち上げ、次世代バンキングシステムの議論を積み重ねた。稼働後にはお客様のコミュニティをつくり、様々なニーズに耳を傾けるとともに、提案を続けている。

 次世代流通基盤CoreCenterもICT最適化の事例の1つだ。流通業向けの基幹システムの構築には2年ほどの期間を要したが、その短縮化とコスト削減を目指してCoreCenterを開発した。導入期間は半年から1年に短縮し、導入後に容易に機能を追加できる。すでに順調に稼働している。

 2本目の柱は「ICTを梃子にお客様に付加価値を提供できるパートナー」。お客様が求めているのは、ICTそのものではなく、付加価値や効率化、スピードといった成果だ。当社もその目的を共有し、ビジネス価値を生み出すパートナーでなければならない。

 決済サービス事業で経験を持つティーガイアと協業したバリューカード事業はその好例だ。コンビニエンスストアなどでEC事業者発行のギフトカードを販売するサービスで、店頭に置いたギフトカードそのものに価値はなく、レジを通して初めて金券として使える。カードの在庫管理は簡単だ。

経験やノウハウを統合し社会基盤づくりの一翼に

 この2つの柱を組み合わせて、3本目の柱である「ICTを活用し社会基盤の提供に貢献できるパートナー」を目指す。様々な業種に提供してきたシステム、消費者や社会インフラ向けのシステムなどの経験やノウハウを統合することで、社会基盤づくりの一翼を担うことを目標にする。

 全国の高速道路などに設置した電気自動車充電インフラはその1つ。充電設備を点として提供するのではなく、つないで情報の連鎖を狙う。クルマから収集した情報を集めて解析すれば、社会の効率化や価値の提供も可能だ。

 また、大和ハウス工業と協業で取り組むBEMSアグリゲーション事業は、クラウドの情報基盤を用いた節電支援サービス。大規模ビルに比べて、節電対策が遅れ気味といわれる中小規模のビルを対象にしている。

 医療分野では、新潟県の佐渡地域医療連携ネットワーク構築に取り組んでいる。全国初の医療・介護情報の一元管理によって、重複検査などを防ぎ、一段と質の高い治療や介護を目指す。医療リソース不足に悩む地域でのモデルケースになり得ると期待する。

●中期ビジョンと今後の方向性
●中期ビジョンと今後の方向性
[画像のクリックで拡大表示]

 新しい時代に付加価値を提供するには、業界の垣根を越えた協力が必須だ。当社はこれまで通りシステムの開発や運用などでQCD(品質・コスト・納期)を徹底しながら、お客様と一緒になって様々なビジネスを連鎖させる「ビジネスエコシステム」というコンセプトで新しいビジネス価値の創出に注力する。そうすることでお客様の戦略的なパートナーになりたい。