2020年には世界中で40億人がネットワークにつながり、300億台を超えるパソコンや周辺機器、スマートフォンなどが常時接続し、1兆3000万個に達する電子タグやセンサーが様々なところに張り巡らされる。これまで以上に大量のデータや情報が新たに生み出されていく環境になる。そのため、堅牢で柔軟なインフラの重要性が一段と高まる。

 HPはそれを構築する技術の提供に力を注いでいる。具体的には、堅牢で柔軟なインフラを有効で安全に稼働させるソフトウエア技術、システム構築・運用を支援するサービスを様々な主要産業に合った形でソリューションとして提供している。

 とりわけ重点を置いているのはクラウド、ビッグデータ、セキュリティ、次世代社会システム、アプリの変革の5つの分野だ。過去5年間でこの5分野の研究開発とM&Aに約4兆円を投資した。その過程で蓄積してきた技術を強力な基盤としてお客様に提示できるようになってきた。今回は、その中からクラウド、ビッグデータ、セキュリティに焦点を当てたい。

クラウドを適材適所に配備し統合的に利用できる環境を提供

日本ヒューレット・パッカード 代表取締役 社長執行役員 小出 伸一 氏
日本ヒューレット・パッカード
代表取締役 社長執行役員
小出 伸一 氏

 クラウドの領域について、HP Converged Cloudを展開する。“Converged”とは「収束された」「集中した」という意味で、「分散」と相反するものだ。異なる形態のITシステムを標準化・仮想化・自動化する。具体的には、従来型のIT、プライベートクラウド、マネージドクラウド、パブリッククラウドといったタイプが異なるシステムを適材適所に配備しながら、それらを統合的に利用できる環境を実現する。

 統合運用環境、統合セキュリティが必須になるが、導入のためのサービスなどを含めて、HPが包括的に提供する。ユーザー部門ごとの導入で生じたサイロクラウドといわれるクラウド増殖やベンダーロックインといった課題を解消。全体最適や統制強化、IT資産保護を通し、柔軟な選択肢(Choice)、信頼できる基盤(Confidence)、サービス間の整合性(Consistency)という“3つのC”をお客様に提供する。

 ビッグデータに関しては、情報最適化という視点でとらえている。データにはデータベースなどに格納された構造化データのほか、メールや画像、動画、ブログ、ソーシャルメディアの中に存在する非構造化データがある。HPは構造化データと非構造化データの双方を最適に管理し、効果的に活用していくための環境を提供する。

 このうち、構造化データには大量のデータをリアルタイムに高速に分析するVerticaで管理する。最大の特徴はカラム型DBの方式による高速解析。顧客データの分析で通常のRDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)の800倍の検索速度を実現した例もある。

 他方、非構造化データに関して、英ケンブリッジ大学でパターン認識技術を研究していた大学教授が設立した会社を2011年に買収し、動画や画像、音声、メールなど様々なデータの解析ができるソフトウエアAutonomyを提供する。英国警察はその活用で捜査資料や調書、監視画像などをタグ付け管理し、キーワードからビデオや音声なども検索できるようにした。検挙率の向上、犯罪の未然防止などの成果を上げた。

 Autonomyの技術を応用したモバイル端末向けの拡張現実アプリケーションAurasmaは、モバイル端末のカメラに写った画像をリアルタイムに分析し、それに関連するデータをクラウド上のサーバーから取得して表示できる。

データセンターに革命を起こす超スケールアウト型サーバー

 セキュリティについては、3つの製品を統合してエンタープライズセキュリティソリューションとして提供している。アプリケーションコードの脆弱性を検出するFORTIFYはソフトウエア開発現場ではデファクトスタンダードの製品。ArcSightは一見問題がないように思えるログ情報を相関分析することで不正を検知し、TippingPointはパッチ適用が難しいシステムで仮想パッチによる脆弱性対策、サーバーやネットワークへの不正侵入を阻止する。どれも高い評価を受け、IT業界をリードする。

 クラウドとビッグデータ、セキュリティに加え、次世代テクノロジーの開発にも積極的に取り組む。その典型例がProject Moonshotだ。これはLEDランプよりも低い6ワット程度の低消費電力で動作するサーバーを4Uのラックに288個収納した超スケールアウト型システム。従来サーバーに比べ消費電力は89%、スペースは94%、コストは64%削減できる。

●HPの戦略
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 革新的なテクノロジーの開発を続け、提供することで、HPは今後もお客様のビジネスのお役に立っていきたい。