住友電工は2012年秋から上海のデータセンター(DC)を利用する計画だ。中国に進出しているグループ会社のうち20社程度を対象に、各社が個別に構築・運用している生産管理や販売管理、会計といった業務システムを統合し同DCに集約していく。

決め手はセキュリティに対する印象

図2●NTTコミュニケーションズの上海のデータセンターを選択した住友電工
図2●NTTコミュニケーションズの上海のデータセンターを選択した住友電工
中国に展開するグループ会社約20社が個別に構築している業務システムを集約するために、DCを利用開始予定。統合した基幹系と情報系システムのサーバーをDCにハウジングする
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 選択したのは、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)がチャイナテレコムの設備を借りてサービス提供する上海のDCだ。日系や米国系IT企業が中国で提供する複数DCを候補に選定を進めていたが、決め手となったのはセキュリティの高さだった(図2)。

 NTTコムがサービス提供している上海のDCの一つを、選定の最終段階で視察した2012年1月のこと。そのときの光景が、担当者である戎嶋一郎 情報システム部システム技術グループ主席の目に強烈に焼きついた。「敷地の入口と建物の入館チェックをしているのは軍隊じゃないか」─。

 関係者に理由を聞くと、明確には答えないものの同DCには中国政府が使う業務システムが設置してある様子だった。DC事業者としてのセキュリティ対策に加え、中国人民解放軍が護衛するこのDCは、中国内では最高レベルの安全性を確保していると考えた。最終的に、もう一つの候補となっていた日系IT企業X社が提供する上海のDCサービスより、セキュリティレベルが高いとの判断に至る。

 NTTコムのDCと同時期にX社のDCも視察。X社のDCでは敷地内へ入るためのチェックはなく、自由に建物の近くまで行ける状態にあった。さらに建物自体には入館チェックがあるものの、中に入るとDCとは思えないくらい多くの人がいた。「たまたま出入り業者や視察が多かった日なのかもしれないが、あれほど人が多いDCは見たことがなかったので違和感があった」と戎嶋主席は振り返る。

広大な国土では物理的な場所も重視

 当初の検討段階で候補となっていたのは、NTTコムも含めた日系IT企業3社と、米国系IT企業が中国企業との合弁で提供するDCの合計4カ所。

 現地でも日本語サポートが標準で付いているかどうかや、DCが存在する場所を重視して事業者を絞り込んだ。

 場所については、中国に進出したグループ企業を統括する拠点が上海にあり、上海周辺の華中エリアに工場など主要拠点が集まっていたことがポイントとなった。「日本であれば、DCの場所は気にしないが、中国は国土が広く、交通手段も日本ほど整備されているわけではない。中国のDC利用も未経験なので、まずは主要拠点からアクセスしやすい上海のDCにすることが必要と判断した」(奈良橋部長)。