日立製作所やNECといった国内大手ITベンダーが、相次いで韓国での事業強化策を打ち出している(表)。日系企業向けにサービスを提供するだけでなく、新サービスの開発拠点としても韓国の地の利を生かそうとしている。
韓国でデータセンター(DC)サービスを2012年7月に開始したのが日立だ。LGグループのLG CNSが所有しているDCを、韓国に進出している日系企業や、国外のバックアップ拠点を探している日本企業に提供する。韓国LGグループとの合弁会社であるLG日立を通じて販売する。
韓国でのITサービス販売・サポート体制を強化するために、現地法人を立ち上げたのがNECだ。6月にソウルの駐在事務所を現地法人に格上げした。韓国の財閥の一つで流通業に強みを持つ新世界グループとも提携し、モバイルソリューションや流通向けのITサービス開発・販売を強化する。
NTTデータや富士通も、韓国での事業を強化中だ。NTTデータはLG CNSとDC事業で業務提携し、2011年12月から日系企業にDCサービスを提供している。さらに現在、クラウドやM2M(マシン・ツー・マシン)分野に協業範囲を広げる交渉を進めている。富士通はモバイル環境を活用した高齢化対策のソリューションや、ヘルスケア分野のITサービス販売を韓国で強化する。
ここにきて、大手ITベンダー各社が韓国での事業を強化している理由は二つある。
一つは、日系企業が相次いで韓国に生産拠点を設け始めており、システム構築・運用などの需要が増える見込みだからだ。韓国は米国や欧州連合(EU)などと自由貿易協定を締結しており、韓国を輸出入の拠点とするメリットが大きい。円高などの背景もあり、韓国に工場を置く日系企業は今後も増えるとみられている。
もう一つは、韓国が最新モバイルソリューションの先進市場になると予測されていることだ。韓国では世界に先駆け、高速通信規格「LTE」のサービスが全国で提供された。サムスン電子など世界的にシェアが高いスマートフォンやタブレット端末メーカーがそろっていることもあり、「最先端のモバイルソリューションを早期に投入しやすい市場環境にある」(韓国NECの尾花英二社長)。
日本のITベンダーは、韓国での事業をさらに強化していくことは間違いない。韓国の大手ITベンダーとの提携分野がどこまで広がっていくかにも、今後、注目が集まりそうだ。