日立製作所やNEC、NTTデータといった国内大手ITベンダーが相次いで、東南アジアとその周辺地域のITベンダーの買収に動いている()。現地ベンダーが持つ顧客基盤の獲得と、ITサービスなどの拡充が狙いだ。

表●大手ITベンダーによる東南アジアとその周辺地域での買収や出資の動き
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 日立は2012年5月30日、マレーシアのITベンダーであるイービーワークスを46億円で買収し子会社化したと発表した。同社はインターネットバンキングなどのシステム構築(SI)や金融関連のソフトウエアの開発を得意とし、年2~3割のペースで売上高を伸ばしている。複数の通貨や言語に対応したソフトを提供しており、「マレーシアのほかシンガポールやインドネシア、中国などの金融機関を顧客に持つ」(日立の山本二雄情報・通信システム社事業執行役員金融システム事業部長)。

 東南アジア全域で、現地企業向けにイービーワークスのサービスやソフトの販売を強化する。得意とするストレージやATMなどを融合させた新サービスの提供も目指す。日立はストレージやコンサルティング分野では海外ベンダーの買収を経験しているが、ITサービス分野においての買収は今回が初めて。これまでは自社で開設した拠点を通じて、日系企業の現地法人を中心に事業を営んでいた。

 NECも日立と同じ5月30日に、オーストラリアの大手ITベンダーCSGのITサービス部門を、現地子会社を通じて約200億円で買収すると発表した。7月までに買収を完了する。CSGが持つ官公庁や大企業向けの販売チャネルを生かし、ERP(統合基幹業務システム)やCRM(顧客関係管理)といったソフトの導入サービスを売り込む。NECが得意とする音声ネットワークサービスなどと組み合わせ、現地の大規模案件の獲得も狙う。オーストラリアを足掛かりに、東南アジアの企業にもサービスを展開する。

 日立とNECに先駆け、NTTデータは2012年1月にタイのアクセレンスを子会社化している。アクセレンスはクレジットカード関連システムの構築でトップシェアを握る企業。2011年10月に出資したベトナムのベトユニオンもプリペイド型の電子決済サービスで同国トップだ。NTTデータは買収・出資先の顧客基盤を生かし、日本で実績のある決済サービスや金融関連システムを売り込む。タイやベトナムを皮切りに、東南アジア全域に事業を広げる。

 IDC Japanによれば、東南アジアのIT市場は2016年には799億ドルに達する見込み。2011年比で6割以上増える計算だ。市場としての魅力は急速に増しているが、国内IT大手の進出の歴史はまだ浅い。日立の山本事業執行役員は「さらなる買収も考える」と、東南アジアでの事業拡大に意欲を見せる。