2011年から海外展開とスマートフォン対応に本腰を入れ始めたディー・エヌ・エー(DeNA)。国内で大手ゲーム会社の人気タイトルのソーシャルゲーム化で収益を上げつつ、海外での拠点作りを急ピッチで進める。既に欧米、中国、韓国で「Mobage」のサービスを立ち上げた。社長就任から間もなく1年を迎えようとしている守安功氏が今年こだわるのが、海外での成功だ。そこには業績拡大はもちろんのこと、モバイル・ソーシャルゲームという“高収益ネットビジネス”を世界に根付かせ、日本の底力を見せつけたいという熱い思いもある。

(聞き手/渡辺 一正=nikkeiBPnet、酒井 康治=日経ビジネス、写真/稲垣 純也)

昨年6月にディー・エヌ・エー(以下、DeNA)の社長になられたわけですが、企業の代表としてこの1年、どのようにとらえられていますか。

「当面、成長路線は変わらない」と話すDeNA代表取締役社長の守安功氏

守安功氏(以下、守安氏):ここ数年はソーシャルゲームが話題になって、私自身も随分この分野を手がけてきたような気がするのですが、振り返ってみるとDeNAが本格的にソーシャルゲームを始めたのが2009年10月の『怪盗ロワイヤル』でしたので、まだ2年半なんですね。サードパーティーのゲームがどんどん出てくるようになったのも、2010年1月のプラットフォームのオープン化以降ですので、ソーシャルゲームの事業期間というのはそれほど長いものではありません。

 2011年を振り返ると、ソーシャルゲームを始めてから2年目に入ったばかりのタイミングで急成長を遂げたということもあり、世の中の評価として「すぐ成長が止まるんじゃないか」「一過性のブームだろう」といった見方が少なくありませんでした。ですから、昨年は一気に拡大してきたソーシャルゲームの事業をしっかり成長させ続けることが大きな課題で、その勢いが本物かどうかを試された年でした。

 そして昨年のもう1つ大きなテーマが、スマートフォンへの対応です。我々のビジネスはフィーチャーフォンから出発したので、「Mobage」自体もそれに最適化して作り上げてきました。しかし、ユーザーの端末が急激にスマートフォンへ切り替わる中、我々の事業基盤をきっちりとスマートフォンへ移行できるのかどうかが問われた年と言えます。

確かにソーシャルゲームの伸びがあまりに激しいため、この勢いが今後も続くのかという点に関しては、特に国内市場においては懐疑的な見方も多いようですが。

守安氏:日本市場では2009年から10年にかけて大きく成長したため、この勢いがいつ止まるのかと、かなり前から注目され続けていました。ところが2011年もかなりの高成長を続け、2012年になった現時点においても、そのペースが鈍る気配はありません。国内市場だけを見ても、まだまだ事業の拡大は続くと見ています。

国内の成長は、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行によってけん引されたのでしょうか。

守安氏:スマートフォンに関しては少し置いておくとして、まず昨年の成長した理由は、モバイルのソーシャルゲームというものがかなり幅広いユーザーに受け入れられたこと、そしてゲームを開発するサードパーティーの増加、さらに大手ゲーム会社が所有する大型タイトルの増加などがあると考えられます。

 大型タイトルについては、2010年末に始めた『ガンダムロワイヤル』(提供:バンダイナムコゲームス)が先駆けだと思いますが、2011年はそうした大型タイトルや家庭用ゲーム機でも人気のあるタイトルがソーシャルゲームとして続々登場しました。これが昨年の大きな成長要因の1つであり、まだまだこの傾向が続いているので、当面、成長路線は変わらないと思います。

『怪盗ロワイヤル』
(C) DeNA Co.,Ltd. All rights reserved.