iPhone/iPadにアプリケーションをインストールする際には、アップルが定めた手順に従う必要がある。実は企業にとって、ここに意外な落とし穴が存在する。App Storeにある有料アプリの大量導入が難しいのだ。

 iOSにおけるアプリの配布シナリオを確認しておこう()。iOSでは、アプリは必ずエンドユーザーが手動でインストールする必要がある。システム管理者によるアプリのプッシュ配信はできない。企業がアプリを大量導入する場合は、エンドユーザーに対してメールやMDMツールを使ってアプリのURLを通知し、そのURLからダウンロード/インストールをさせるのが基本だ。

表●iOSにおけるアプリケーション配布シナリオ
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 企業が独自に開発した「社内向けアプリケーション」は、ファイルを社内Webサーバーに置いて、それをダウンロード/インストールしてもらうようにすればよい。社内向けアプリは、企業向け開発者プログラムであるiDEPに参加すれば、開発できるようになる。

 App Storeにあるアプリの場合は、App StoreにおけるそのアプリのURLを通知する。エンドユーザーがURLにアクセスすると、iPhone/iPadの場合はApp Storeアプリが、PCの場合は「iTunes」が起動し、アプリをインストールできる。

ボリュームライセンスはまだ

 ただし、App Storeにある有料アプリをダウンロードすると、Apple IDに対する課金が発生する。エンドユーザーが個別に決済するようだと、会計上も手間がかかる。

 米国では、有料アプリの大量導入を容易にするサービスが利用できる。アップルが2011年10月に始めたiPhone/iPad用アプリのボリュームライセンス制度「App Store Volume Purchase Program」である。この制度を使うと、企業は有料アプリのライセンスを一括購入できる。同制度でライセンスを購入すると、App StoreアプリやiTunesで購入手続きを行わずに有料アプリをインストールできる「コード」を入手できる。企業は、エンドユーザーに有料アプリのURLとコードを通知すればよい。

 日本ではまだ、App Store Volume Purchase Programは始まっていない。アップルのエンタープライズパートナーであるToo販売企画部の草加健児ゼネラルマネージャーは「App Storeの『ギフト』を使うのが一つの手」と語る。ギフトを使うと、会社が購入したアプリの利用権をユーザーに「贈与」できる。アプリの贈与作業は、ユーザーごとに1件ずつ手作業で進める必要があるが、会社による有料アプリの一括購入が可能になる。