Linuxデスクトップを導入する企業や自治体が出てきている。それらの組織が導入に踏み切った背景と導入時の工夫をリポートする。今回は大阪府箕面市の事例を紹介する。同市は、市内の小中学校で中古パソコンをLinuxで再生利用している。ネットワークブートによりシンクライアント化。管理の手間を削減し、HDDの故障による障害からも開放された。

 大阪府箕面市は2009年7月、市内の小中学校にあるコンピュータ教室のパソコン約800台を一斉リプレースする計画をスタートした。既存のパソコンは10年ほど前に導入したもの。スペックは、CPUが動作周波数800MHzまたは1GHzのCeleron、メモリーが128Mバイトと、かなり低い。

 箕面市は、このパソコンを教員に配布することにした。当時、市内に20校ある小中学校の職員室では、3~4台の共用パソコンが配備されている程度。中古パソコンを活用し、教員1人に1台のパソコンを配備する。

 800台のパソコンにはWindows 2000がインストール済みだった。このうち再利用できそうな500台を選び、Windows 2000を再インストール。さらに、業務利用の多いMS Officeを追加しようとした。この場合、Windows 2000のライセンスは不要だが、MS Officeのライセンスは新規に購入する必要がある。

 しかし、この計画を知った倉田哲郎箕面市長が「待った」を掛けた。Windows 2000のサポート停止は目前に迫っていた。1~2年もすればバージョンアップが不可欠。バージョンアップに伴ってパソコンの入れ替えが必要になるかもしれない。そうでなくても故障することはあるだろう。

 倉田市長は、当時情報政策を担当していた那谷 進担当主査(現在は子ども部子ども支援課)に、こう指示した。「今回のパソコン再配置に掛かる予算を使って構わない。すべてをクリアできる解決策を考えてほしい」。期限は市議会で予算審議が始まる2週間後だった。