当社はグレーターチャイナ地域(中国大陸および香港)のデータセンター拡充のため、2012年12月に北京における第2号のデータセンターを開設し、さらに香港の既設データセンターを増床する。今回はデータセンターの開設を通じて、北京の不動産・電力事情に関する雑感を述べたい。

 データセンター事業を展開するには「建物」と「電力」が必要不可欠の要素である。ところが、現在はこの二つを同時に満たす物件が希少だ。

新データセンター開設から見た北京の不動産・電力事情

 建物の問題としては、まず立地が挙げられる。一定規模のデータセンターを設置できる建物を、四環路(東京の環状八号線に相当)内に探すことは不可能に近いほど不動産物件が限られている。しかも価格が高騰している。日本では「都市型データセンター」の需要が旺盛だが、北京で実現するのは非常に困難だ。膨大な資金と政治力をもってすれば可能かもしれないが、超高額なデータセンターになるだろう。

 当社の新データセンターは、北京市の東南に位置する北京経済技術開発区内に開設した。北京の五環路(東京の外環自動車道に相当)の外となる。北京を知る方は、遠いと感じるかもしれない。しかし、北京中心部からわずか20km圏内なのだ。国内事業者である中国電信や中国聯通などが新設するデータセンターも、最近はすべて五環路の外である。北京近郊は近年ベッドタウン化が進んでおり、五環路以遠の住宅が増えている。郊外に延びる地下鉄も急ピッチで整備が進んでいる。一昔前の東京と同様の生活圏の急拡大を肌で感じる。数年後は「五環路?結構近いね!」と言われることだろう。

 電力については、地方都市の工業団地では事前周知なしの停電の話をしばしば聞くが、さすがに首都北京ではそこまでのことは起こらない。2008年に開催された北京オリンピック前には頻繁な計画停電があったが、それでも突然停電になったことはない。

 ただ、データセンターで使用する大容量の電力の調達は難題である。北京市とて無尽蔵の電力資源はない。市政府は北京を含めた華北エリアの電力をいかに効率配分するか考えており、電力を配分するに足るプロジェクトなのか厳しくチェックしている。さらに、政府肝いりのプロジェクトでもない限り、電力容量の確保は国有電力会社との直接交渉である。交渉過程は思い出しただけで気を失いそうなので、ここでは詳細は控えさせていただく。

 安定したインフラを確保して信頼性の高いデータセンターを構築することが、データセンター事業の成否を分ける。中国でもクラウドコンピューティング(中国では「雲計算」と呼ぶ)市場は右肩上がりで成長している。雲の裏側で、ユーザーが重要な情報システムを安心して預けられるデータセンターを目指したいと思う。

義本 勝啓(よしもと かつひろ)
テレハウス北京経営管理部部長。2007年10月同社出向、経営管理全般を担当する。赴任5年目を迎え中国ビジネスに慣れすぎて周りから注意されることもしばしば……。日ごろの鬱憤(?)をラグビーとカラオケで発散している。