ジュピターテレコム(J:COM)代表取締役社長の森修一氏は、7月24日に行った四半期決算発表で、同社が開発を進める次世代STBについて説明した。「日本ケーブルラボ(Jラボ)の標準技術仕様化を全面的に協力してきた。標準化に賛同したベンダーのSTB開発を積極的にサポートしている」とし、そのベンダーの例としてパイオニアと韓国Humaxを例に挙げた。今年中にフィールド試験を行い、2013年春の正式リリースを予定する。次世代STBにおいて「現状のRFをフル活用してテレビサービスの魅力の価値を向上させる」「IPにも対応して、マルチ端末との連携やネットとの連携を図る」と方針を示した。

 説明終了後の質疑応答で森氏は、KDDIが開発し7月18日に発表した次世代STB「Smart TV Box」について「既存の各種サービスの提供ができるか、または新たなサービス開発に活用できるかなど技術的および営業施策的見地から採用するかどうか、慎重に検討を進めている。現時点で何も決定していない」と説明した。

 J:COMはまだ最終的に、どのベンダー/STBをどういう形で採用するか決めたわけではない。しかし来年の導入に向けて、ケーブルテレビ事業の今後の展開も見据える形で次世代STBの検討を進めてきている。次世代STB導入に向けた取り組みを、J:COMの現場担当者に聞いた。

後継機→次世代、ソフトのダウンロードで実現

 ケーブルテレビ事業にとってSTBは、事業の根幹であり、たとえ次世代STBが素晴らしいものであったとしても、導入の過程でユーザーの利便性を損なうような事態は絶対に避けたい。レガシーのサービスからスムーズな移行を図る必要がある。

 J:COMは、社内で「後継機」と呼んでいる機種を導入することで、次世代STBへのスムーズなサービス移行を図ろうと計画している。「現在ベンダーではJラボの仕様に基づいて、ハードウエアの開発が進んでいる。このハードウエアの上で、まずはベンダー開発による従来からの延長線上のソフトを動作させ現行機種の後継機として導入を図る。その後、業界として次世代STBのアプリの開発が進むなど環境が整備されたタイミングでダウンロードでソフトウエアを入れ替え、次世代STBとして動作させる」というのが、現在同社が想定している基本的な移行ストーリーである。

 Jラボが仕様を策定したハイブリッドBoxは、ベンダー独自仕様ではなく、ケーブルテレビ業界が求める機能改善を事業者が用意するソフトウエアで実現可能なSTBである。一方、現在のSTBではEPGなどのソフトウエアはベンダーが開発したものが利用されている。新仕様に基づく新しいハードウエアを投入後もまずは現行STBの後継機として利用し、例えばEPGソフトも従来通りベンダーによるソフトウエアを利用する。環境が整いダウンロードによりソフトウエアを更新した後は、次世代STBとしてケーブルテレビ事業者が用意したEPGアプリを利用できるようにする。STBのコストは「部材コスト+開発費」であり、後継機と次世代機のハードウエアを共通化できれば、スムーズなSTB移行が可能になるほか、ベンダーは開発費を抑えることも可能になる。