“So Much Profanity”

 1998年12月。まばゆい陽光の降り注ぐ午後。普通の映画館と変わらぬたたずまいの劇場の中,Doug Darrowは胸の高鳴りを抑えることができなかった。最初の1本を見てからずっと,STAR WARSにぞっこんだった。自分の目の前に「彼」が現れる日が来ようとは,この期に及んでなお夢のようだ。

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 準備は万端である。テキサスの開発拠点から運んだデジタル・プロジェクタの試作機は,スカイウォーカー農場のテクニカル・ビルディング内にあるこの劇場,「Stag Theater」に設置済みだ。

 Dougは前夜,同じ場所で実施した試写を思い起こし,自らを奮い立たせた。昨日の観客は,プロデューサーのRick McCallum,DougとLucasfilm社の間を取り持ったDave Schnuelle,そしてLucasfilm社Post Production SupervisorのMike Blanchard。実演に先立ち,Dougらは複数の映画から抜粋したクリップ映像を,デジタル・ファイルに変換してあった。その幾つかを見せた後,1998年公開の映画「トゥルーマン・ショー」を選んで映す。

 トゥルーマン・ショーの映像が30秒ほど流れると,Rickの様子がおかしくなった。画面を見ていたかと思うと映写室を振り返り,再び画面を凝視しては映写室を振り仰ぐ。自分の目が信じられないようだ。我慢できずにRickは口を開いた。

「こりゃいったい何だ?」

 Daveが答える。

「トゥルーマン・ショーです」

 Dougが付け加える。

「これがデジタルなんです」

「これがデジタル?」

「そうです」

 次の瞬間,Rickは堰を切ったようにしゃべりだした。活字にできないような罵詈雑言に,よくよく耳を傾ければ,どうやら画像の品質に感銘を受け,最大限褒めちぎっているらしい。何かを賞賛するときに,これほどまで汚い言葉を使うのを,Dougは生まれて初めて聞いた。

 そして今日がいよいよ本番である。どんなにRickが興奮しようと,デジタル・プロジェクタの採用を決めるのは,あくまでも監督の意向だ。当時,米Texas Instruments Inc.(TI社)でDLP Products,Commercial Entertainment,Business Managerを務めていたDougは,エピソード1の監督,George Lucasが現れる瞬間を,祈るような気持ちで待ち受けた。