企業戦略論の第一人者ながら日本での知名度は低い米カリフォルニア大学ロサンゼルス校ビジネススクール教授の30年ぶりの著作という。

 誤った戦略は重大な問題から目をそらし、目標と取り違え、空疎な語句をプレゼンテーションソフトウエアのひな型にちりばめる。だが優れた戦略には驚きがある。その構造やテクニック、環境変化に対応するヒントを豊富な事例で簡潔に説明する。登場する事例はイタリアの同族経営の機械メーカーから、米同時多発テロ以降の国家安全保障戦略にまで及ぶ。この分野にありがちな後講釈感は残るものの、誤った“戦略”をどう正すかに日々頭を悩ます中堅、若手の強力な武器となりそうだ。

良い戦略、悪い戦略

良い戦略、悪い戦略
リチャード・P・ルメルト著
村井 章子訳
日本経済新聞出版社発行
2100円(税込)