前回までは、外的要因である「経済環境、経営環境、技術環境の変化に伴う将来への不安のストレス」の低減について説明してきた。
今回からは内的要因である「価値観、意識、思考の変化に伴う人間関係のストレス」にどう対処していけばよいかというテーマに移ろうと思う。
恋愛だってストレスになり得る(?!)
ただし施策を実践するためには、まずストレスに関する基礎知識や、ストレスを感じる人間の心(脳)の仕組みを理解する必要がある。
「ストレス」に関する正しい知識を持っている人は意外と少ないので、少し遠回りに感じられるかもしれないが、お付き合いいただきたい。ストレスを感じるのは、人間の本能であり、人間にとって適度なストレスは快適な生活のためには必要不可欠なのである。
図1にストレスの原因の一部をまとめた。自分を取り巻くすべての出来事から人はストレスを受けている。
意外と思われるかもしれないが、楽しいこと、うれしいことだと思っていても、見方を変えれば、大きなストレスになっている。
例えば、楽しいはずの恋愛も、相手の気持ちに気をもんだり、相手からの連絡が途絶えたとき不安になって食が細くなったり、他のことに手がつかず、それしか考えられなくなったりしてしまった場合はストレスになっている。
つまり、ストレスは五感を通じて我々にもたらされる情報の一部であり、ストレス(情報)の無い世界は現実には存在しない。
もし人間がストレスを感じなかったら、自分の身に迫る危険を察知できず、心の成長も止まり、生きてはいけないと言われている。例えば、暑さや寒さのストレスを感じなければ、熱中症や凍傷の危険から身を守れないだろう。また失恋や挫折は、精神的な成長を促し、強い意志力を養い、時に発奮材料となって夢を実現させる原動力となることもある。
こうしたストレスがメンタルシック(心の病)を引き起こすかどうかについては、ストレスの「認知(受け止め)」の傾向や、脳内の情報伝達物質の過不足などが関係していると言われている。まだ未解明な部分も多いが、以下ではそれを説明していこう。