米Appleと韓国Samsung Electronicsの特許訴訟で先日、米連邦地裁の陪審団がApple側に有利な評決を下した。このことから、海外メディアでは米Microsoft(MS)にチャンスがやってきた、という報道が目立つようになっている。

リスクの少ないWindows Phoneに千載一遇のチャンス

 Apple対Samsungの訴訟は世界10カ国で展開され、訴訟の数は約50件に上る。米カリフォルニア州の裁判でも、Samsung製品の恒久的販売差し止めの審問日が2012年12月6日に設定されるなど、両社の法廷闘争は長期化の様相を呈しており、まだ第1ラウンドが終わったという段階だ。

 そうしたなか、通信事業者やスマートフォンメーカーなどのモバイル業界は、訴訟で焦点となっている米Googleの「Android」に不安を抱くようになっており、訴訟リスクの少ない第3のモバイルOS「Windows Phone」に注目が集まっている。もしAndroidへの懸念がさらに広がれば、Microsoftにとっては千載一遇のチャンス、同社は不振なモバイル市場で一気に巻き返しを図れるかもしれないという。

 米国の市場調査会社IDCがまとめた2012年第2四半期(4~6月)のWindows Phone搭載スマートフォンの世界出荷台数は、わずか540万台。これはAndroid搭載スマホの20分の1、iOS搭載スマホの5分の1という規模だ。市場シェアを見ても、Microsoftのシェアはわずか3.5%。Androidの68.1%、iOSの16.9%から大きな開きがある。

 米Wall Street Journalによると、Windows Phoneの普及が進まないのは、AndroidやiOSのようにアプリケーションが豊富にそろっていないことが理由。だがアプリケーションの数が増えないのは開発者が積極的にならないからで、その最大の理由は端末が普及していないこと。Microsoftは「鶏が先か、卵が先か」のジレンマに陥っているという。

 Microsoftはこうした状況を打開しようと、開発費用を負担したり、奨励金を出したり、販売業者に対し高い利益率を設定したりして普及を図っているが、大きな成果は出ていないという状態だ。

 ところがここに来て状況が変わってきた。というのもカリフォルニアの訴訟で争点となったのはSamsungが後から端末に付加した機能ではなく、ユーザーインタフェースなど、そもそもGoogleのAndroidの備わっていた機能やデザインだからだ。これには、例えば画面を最後までスクロールすると跳ね上がる「バウンスバック」機能や、角丸の正方形アイコンなどがある(Wall Street Journalが詳細資料を掲載している)。

 これに対しWindows Phoneは、サイズの違うタイルを並べるなど異なる手法を取っている。こうした独自のユーザーインタフェースが訴訟リスクを低減させると注目されている。