思えばかれこれ三年あまり。日本でも、企業のビジネスにおけるツールとして、ソーシャルメディアが活用される動きが積極化してきた。それに伴い、一部の企業では「ソーシャルメディア担当」をアサインするような動きも見えてきたし、さらにソーシャルメディアに限らず「デジタル(マーケティング)専門の部門」といったような組織を組むような企業も少なからず出てきた。

 これはつまり、ソーシャルメディアに限らずデジタル方面へのアプローチが、これまでの「個人が片手間に行う」オペレーションが中心だったものから、「組織として大規模かつ密に取り組む」という形で戦略面からきちんと落としこむような流れに変わりつつあるからだろう。もちろん、理由は様々だが、それだけ企業のビジネスにおいて、ソーシャルメディア、ひいてはデジタル方面へのアプローチ自体が以前と比してかなりプライオリティが高いものとして位置付けられるようになっているということにほかならない。

 もちろん、ビジネスとしてプライオリティが高くなってきているということは、その分厳しく結果が求められるということでもある。さらに言えば、担当者に対して求められるものも変わってきている。

ソーシャルメディア担当者に求められる3つのスキル

 以前にこの連載で『「ソーシャルメディア担当者」に求められるスキル』というテーマで書いたのは昨年の11月末だった。その当時(と言っても、まだ9カ月ほどだが)は「ソーシャルメディア担当者」に求められるスキルとして、以下の3つを兼ね備えることが望ましいということを述べた。

  • (ソーシャルメディア上における)コミュニケーションスキル:TwitterやFacebook上で、多くのユーザーとトラブルなくコミュニケーションを取るためのスキル。特に企業のアカウントを用い、実際にコミュニケーションを行なっている、いわゆる「中の人」を担当する場合は必須のスキルとなる。
  • (Web 関連の)テクニカルスキル:ソーシャルメディア上の各サービスやプラットフォーム上で、何ができて何が出来ないかなどを理解し、企画されているマーケティングコミュニケーション施策に対して技術的な裏付けを確認するためのスキル。
  • (ソーシャルメディア上の声を的確に分析するための)リサーチスキル:特に「傾聴」戦略を実践していく場合において、ユーザーから発せられるソーシャルメディア上の会話から的確なインサイトを引き出すためのスキル。

 もちろん、これらのスキルが重要なのは、当時も今も全く変わらない。だが、今回は「ソーシャルメディア担当者」より、もう少し幅を拡げて「(これからの)デジタルマーケティング担当者」に求められるスキルを考えてみたいと思う。

より幅広いスキルが求められるようになってきた

 特に海外では「デジタルマーケティング担当者」に求められるスキルセットが以前と比してかなり異なってきている。いや、「増えた」と言った方が適切かもしれない。

 少なくとも以前は「Webサイトを確実に運営できるために必要なスキル」つまり「Webに関する基本的な技術」を身に付け、それを用いて「自分で(ある程度の)ページを制作できる」ことや「外部のエージェンシーやベンダーに的確にディレクションを行う」ことがまず求められ、その上で「Webサイトに関わる様々な指標を測定し、分析する」ことができるというものが第一に求められていた。

 だが現在は特に海外の企業では、それに加えて「ソーシャルメディア担当者」に求められるスキルが、さらに上積みされる形で求められる。実はそれだけではなく、さらに「Eコマース」や「CRM」に関して、知識だけではなく「経験」や「実績」が求められるようになってきている。

 つまり、Webサイトを運営できるスキルが伴っているのは、もう最低限の前提条件といえる。その上に限りなくマストに近い形で、上に上げたような「ソーシャルメディア担当者」に求められるスキルを持っていることが要求されている。そして「Eコマース」や「CRM」のスキルや経験、そして実績がさらに求められるような状況になってきていると言ってもいいだろう。

 このように、以前と比して求められるものが非常に広くかつ深くなってきているのだが、次回は、これらのより細かく掘り下げた形で「(これからの)デジタルマーケティング担当者」に求められるスキルと、その理想像について考えてみたいと思う。 

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
リーバイ・ストラウス ジャパン デジタルマーケティングマネージャー
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後PR代理店バーソン・マーステラでリードデジタルストラテジストを務め、2011年12月よりリーバイ・ストラウス ジャパンにてデジタルマーケティングマネージャーとなる。