システム開発をめぐる契約は、年々複雑さを増している。クラウドを使ったシステム開発やアジャイル開発のプロジェクトなど、開発手法や技術の変化で契約の仕方が分かりにくい場面が増えている。開発契約に携わる法務担当者や現場担当者、弁護士などへの取材を基に、今現場が知っておくべき開発契約の知識を、「ウソ」と「ホント」で解説する。

 今回は、受託開発と裁判における議事録の証拠能力についての「ウソ」と「ホント」を取り上げる。

請負でも委任でもない受託開発がある

ホント

 受託開発で個別にシステムを開発するが、その開発費を請求せず、SaaSの利用料で稼ぐ開発ベンダーが登場し始めた。

 受託開発でありながら、請負契約でも準委任契約でもない契約形態のサービスを提供する企業が登場している。永和システムマネジメントの「価値創造契約」、ソニックガーデンの「納品のない受託開発」がそれだ。

 両社のサービス内容は共通している。まず、発注者の要望のうち、必要最低限の機能を持つシステムを開発し、なるべく早く利用を開始してもらう。システムはSaaSとして提供し、発注者から利用料を徴収する。契約は利用契約のみだ。利用料にはシステム改変の料金が含まれており、発注者は必要に応じて追加開発を依頼できる。

 永和システムマネジメントとソニックガーデンは共に、アジャイル開発に適したビジネスモデルを模索した結果、この契約に至ったという。「継続的に改善し続けるアジャイル開発は、システムを顧客に納品しないSaaSと相性が良い」(ソニックガーデン 代表取締役社長 CEO 倉貫義人氏)。

 ただし、この契約形態はどんなシステムにでも適用できるわけではない。「長期的な利用が期待できるシステムに限る」(両社)という。開発ベンダーはSaaSを発注企業1社にしか提供しないので、長く利用してもらわなければ開発費を回収できないためである。