システム開発をめぐる契約は、年々複雑さを増している。クラウドを使ったシステム開発やアジャイル開発のプロジェクトなど、開発手法や技術の変化で契約の仕方が分かりにくい場面が増えている。開発契約に携わる法務担当者や現場担当者、弁護士などへの取材を基に、今現場が知っておくべき開発契約の知識を、「ウソ」と「ホント」で解説する。

 今回は、共同開発したSaaSの著作権と、アジャイル開発の契約における「ウソ」と「ホント」を取り上げる。

共同開発したSaaSの著作権は発注者が持つ

ウソ

 著作権は発注者と受注者が協議して、どちらかあるいは両者が持つことを決める。SaaSの場合は受注者が持つことが多い。

 複数のユーザー企業が共同利用するSaaS(Software as a Service)の開発を委託する事例が出てきた。このような場合、発注者と受注者が協議して、成果物の著作権をどちらかあるいは両者が所有するかを決める。

 例えば、東急建設、竹中土木、日本国土開発、TSUCHIYAの建設4社とNECが進めているプロジェクトでは、著作権をすべてNECに帰属させることにした。財務会計や工事実績管理などの機能を有する建設業向けSaaSを共同開発し、2012年3月までに4社が利用開始するというものだ。

 NECが著作権を持つ契約にしたのは、稼働後にNECがこのSaaSを4社以外の企業に販売しやすくするためだ。「SaaSとして販売するためには、当社が著作権を持つ必要があった」(NEC ビジネスサポート本部 契約支援センター シニアエキスパート 小林 正之氏)。利用企業が増えることで、SaaSの利用料が安くなることを4社は期待している。