フェイスブックの重要な機能である「タイムライン」。フェイスブックの誕生から成功までを追った10万部超のベストセラー『フェイスブック 若き天才の野望』の担当編集者が、その位置づけを紹介する。

 2011年9月22日、当時27歳の若きフェイスブックのCEO、マーク・ザッカーバーグは同社の開発者イベント「f8」に詰めかけた開発者を前に、基調講演で誇らしげに話した(写真1)。

 「ソーシャルネットワークはこの5年で、世界中の何億人もの人々が毎日使う便利なツールになった。先週、フェイスブックの1日の利用者数が初めて5億人を超えた。さらに毎日多くの人が登録している」

 そしてフェイスブックは、今後5年間に向けた重要な機能として、2つの新機能を発表した。それが、「タイムライン」と「リアルタイムフィード」だ。

過去の思い出をスクラップしていく「タイムライン」

 タイムラインは、各ユーザーのプロフィールを紹介する新しいページだ(写真2)。フェイスブックのユーザーがこれまでに投稿した文章、写真などをスクラップブックまたは履歴書のような体裁で表示する。タイムラインはユーザーインタフェースが素晴らしく、ひと目で「この人は何者か」がわかるページとして作り込まれている。

 フェイスブックにとって、プロフィールは非常に重要な役割を持つ。そもそもフェイスブックは、ハーバード大学生のオンライン名簿の代わりに登場したサービス。『フェイスブック 若き天才の野望』によると、当初のフェイスブックは写真と簡単な自己紹介を入れれば登録でき、独身か既婚か、交際相手がいるかなどの交友関係、連絡先、受講している講義、好きな映画、音楽、本などの情報があったくらいだという。その後、友達が今何をしているかを表示する「ニュースフィード」機能を導入したり、「いいね」ボタンを追加して友達の嗜好を知ることができるようにしたりするなど数々の機能を追加してきたが、プロフィールページはそれほど大きく刷新してこなかった。今回フェイスブックは、同社のサービスの中核部分に大きく手を入れたわけだ。

 ほかにも、タイムラインは大きな意味を持っている。それは、フェイスブックが「過去」を充実させる初めての機能であることだ。フェイスブックへの投稿を続けるうちに、ユーザーは無意識ながらも自分の履歴を蓄積していく。あの時に何を食べ、誰と過ごし、何をしてというように思い出が積み重なって行く。しかしこれまでは、その思い出はフェイスブックの中にデータとして存在していたが、ユーザーからは見えにくく、本人でさえも忘れていた。この思い出をタイムラインが、本人にも第三者にも、ひと目でわかるように時系列できれいに見せるのだ。

 ソーシャルネットワークは、その場に友達が多くいればいるほど、思い出があるほど、別のサービスに移りにくくなるものだ。フェイスブックは「タイムライン」によって、さらにその地位を揺るがないものにしたのではないだろうか。