東京シティ・エアターミナルに隣接し、外国人客の利用が多いロイヤルパークホテル(東京都中央区)では、接客担当者が食事に関する相談を受けることが多い。そこで飲食店の案内などにiPadを活用することにした。

 口頭では説明が難しいすき焼きとしゃぶしゃぶの違いなどをロビーに置いたiPadで伝えている。老舗の料理画像や調理風景の動画も盛り込んだ独自コンテンツを制作できるのは、近隣の飲食店とメニューの英語化や中国語化で協力してきた地道な努力あればこそだ。

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 「外国人に口頭で、焼き鳥の部位やすき焼きとしゃぶしゃぶの違いなどを伝えるのが難しかった。iPadを使えば、料理の画像や調理風景の動画を使ってこうした情報を的確に伝えられる」。ロイヤルパークホテルで営業企画室長を務める岡村佳一氏はこう話す。

写真●接客担当者が周辺店舗の情報などをiPadで説明する
写真●接客担当者が周辺店舗の情報などをiPadで説明する

 ロイヤルパークホテルは2011年1月にiPadを4台導入。ロビーなどに置いて、ホテルがある日本橋周辺の飲食店や観光スポットの特徴などを動画を交えて紹介している。システム開発などは、近畿日本ツーリストと訪日外国人向けに旅館紹介ポータルを運営するまいど日本(東京都新宿区)の協力を仰いだ。

 東日本大震災の影響で落ち込んだとはいえ、ロイヤルパークホテルの宿泊客に占める外国人の比率は30%を超える。近くに外資系IT企業の日本法人があることもあって、大半が欧米からのビジネス客だが、接客担当者への相談で多いのが意外にも食に関するものだという。

 「飲食店を中心に100年以上続く老舗が250件超ある日本橋の魅力をどううまく伝えるかが課題だった」(岡村室長)。

 iPadの導入に先駆けて、ロイヤルパークホテルは2008年に近隣にある58の飲食店と協力して、まずはメニューの英語化に取り組んだ。翻訳にかかる費用や作業は全てロイヤルパークホテルの負担だ。それでも日本橋の魅力が伝われば、ホテルのリピート利用にもつながるという狙いがあった。その後は中国語への対応も進め、訪日外国人に対する訴求力を高めていった。

厨房内まで撮影できる関係を作る

 こうした取り組みの過程で「近隣にある飲食店と良好な関係を築けた。これがiPad用のコンテンツを作成するうえで役立った」(岡村室長)という。例えば、いきなり「iPadで店の特徴を紹介する取り組みを始めるので、調理風景を撮影させてくれ」と言っても難しい。時間をかけて独自のノウハウを蓄積してきた老舗であればなおさらだ。しかし、事前に関係作りを終えていれば、交渉を進めやすい。

 岡村室長は「iPadをはじめとした最新技術を取り入れるだけではうまくいかない。ソフト面の整備を進めたうえで、それだけでは伝えきれない部分を最新技術で補うという発想で臨むべきだ」と強調する。