車載用途でのEthernet利用拡大に向けた課題のうち、コストに関しては物理層で解決する動きが活発化している。

 導入コストのうち、焦点の一つになっているのがケーブル・コストの削減である。ケーブル・コストの課題を解決しようと、物理層LSIを手掛ける企業が開発を進めている。米Broadcom社や米Marvell社、米Micrel社などである。

 Broadcom社は、車載Ethernetに向けに開発したデータ伝送技術「BroadR-Reach(ブローダーリーチ)」を使い、車載用途で求められる数十mの伝送距離において、UTP1対で100Mビット/秒を実現できるとしている。シールドが不要になるだけでなく、100Mビット/秒のデータ伝送速度でありながら、一般的な「100Base-TX」の信号線2対よりも配線を削減できるのが特徴だ。

 データ信号線だけでなく、電源線の削減も狙い、1対のUTPでデータ伝送と共に電力供給を可能にした。既に1対のケーブルで5W前後を供給できるという。カメラ・モジュール1個を駆動できる水準である。

 BroadR-Reachに対抗するのが、OBD用途向け物理層LSIを手掛けるMarvell社やMicrel社だ。両社はそれぞれ、OBD用途での実績を武器に、カメラ・システムや情報系への適用拡大を目指している。「欧州車メーカーを中心にOBD用途で数百万個の出荷実績がある」(マイクレル・セミコンダクタ・ジャパン)という。加えて、IEEE標準のEthernetをベースしている点も特徴にうたっている。

 OBD用途から情報系など、さらなる用途拡大に向けて、Marvell社とMicrel社はそれぞれ、UTPで100Mビット/秒の伝送を実現できる物理層LSIの開発に取り組んでいる。

(詳細は日経エレクトロニクスの2012年8月6日号の解説「Ethernetがクルマに載る」をご参照ください)