自動車内のECUや電装品同士を接続するネットワーク、いわゆる車載LAN規格に「Ethernet」を利用しようと、自動車業界が舵を切り始めた。

 期待が高まるEthernetだが、車載用途で利用するには、リアルタイム性やフェイルセーフ、導入コスト、データ伝送速度の面で課題がある。中でも、リアルタイム性とフェイルセーフの課題解決が、車載での用途拡大には不可欠だ。

 民生用途のEthernetは、ベスト・エフォート型の通信で遅延時間の保証がない。そのため、リアルタイム性を確保しないと、制御系はもとより、情報系にも適用できない。フェイルセーフに関しても、障害からの復帰時間が長く、車載用途での利用は難しい状況だ。

 Ethernetは、7層あるOSI基本参照モデルのうち、下位にある物理層とデータリンク層の二つの層を規定する。このうち、主にデータリンク層の改善で、リアルタイム性の向上とフェイルセーフの確保を実現しようとしている。

 その動きの中心にあるのが、Cisco社やIntel社らが2009年に立ち上げた「AVnu Alliance」である。同団体は、高品質のオーディオ・ビジュアル環境を家庭だけでなく、自動車内でも構築するために「IEEE802.1 Audio/Video Bridging」(以下、Ethernet AVB)の採用を推進している。ここに自動車業界が着目し、車載用途に必要なリアルタイム性やフェイルセーフに関して議論を進めている。

 既に車載の情報系の用途では、Ethernet AVBの現行仕様で実用水準を満たすという。その一方で、制御系に用いるにはリアルタイム性やフェイルセーフの点で十分ではない。そこで、2014年以降に策定完了予定の次世代仕様で、改善を図ろうとしている。

(詳細は日経エレクトロニクスの2012年8月6日号の解説「Ethernetがクルマに載る」をご参照ください)