トヨタ自動車がEthernetに白羽の矢を立てた背景には、クルマの安全性を高めるために車両の運動制御の向上が求められ、より高速かつ高信頼性の通信ネットワークが必要になってきたこと、情報系LANでは音声や映像の同時ストリーミングが必須になること、周辺監視カメラの搭載増加に伴って通信量が増大していること、などがある。

図1 車載EthernetはEthernet AVBに準拠する。
図1 車載EthernetはEthernet AVBに準拠する。
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 Ethernetのメリットは、これらの要件を満たすことができる上、既存の物理層の流用などによって開発コストを低減できる、将来的には光ファイバ仕様への拡張も可能、パソコンやモバイル機器との接続が容易といった点だ。ただし、現行のEthernetを自動車に適用しようとすると、遅延時間の保証がないのでリアルタイム性に難がある他、障害からの復帰時間が最大数十秒ほどかかるのでフェイルセーフ性も不十分である。

 そこで、トヨタ自動車は車載LANとして必須の技術要件をEthernetに追加し、かつ制御系と情報系の領域をカバーできる仕様の策定に臨んだ。実際にはAVnu Allianceが推進するEthernet AVBを拡張した(図1)。

 トヨタ自動車は既にルネサス エレクトロニクス、Broadcom社と共にホワイト・ペーパーを作成しており、それが、AVnu Allianceの承認を得て2011年4月末に発行された。今後、情報系に関してはAVnu Allianceのワーキング・グループで議論される予定だ。制御系については、IEEE802.1 Ethernet AVB Gen.2で標準化を狙うが、2011年3月に開催されたIEEE会合で、3社の連名で車載制御系要件を提案済みである。