ユーザーの意図とずれがある提案には、「ピント外れ」のものと、「的外れ」のものがあります。

 ピント外れの提案とは、ピントを合わせて欲しいところとは別のところにピントが合っているもののことです。例えば、提案全体の内容にずれはないものの、機能の実現性が課題になっているのに、実現方法に関する説明が大雑把で、拡張性にばかり力点を置いているなどの提案がこれに当たります。

 ベンダーにいきなりRFPを提示して提案書を求めると、ベンダーとユーザーの視点のちょっとした違いによって、ピントがずれがちです。多くの場合、その原因の半分はRFPの記載内容が不十分なことにあります。

 ピント外れの提案は、ユーザーがベンダーに修正を依頼することによって、採用の可能性があるものに改善されることがあります。ただし、何度頼んでも思うように修正されない場合、ユーザーはそうした飲み込みが悪いベンダーとは付き合いたいとは思わないでしょう。

 一方、的外れな提案とは、重要なところで勘違いをしているため、その影響が及ぶ部分についてはほとんど全面的に書き換えが必要なものをいいます。例えば、図面が必要な特注部品の調達業務なのにカタログ品しか扱えない業務パッケージを提案していたり、企業規模に不釣り合いな規模のシステムを提案していたりするケースが該当します。

 的外れな提案は、一読しただけでゴミ箱行きになります。そんな提案書を提出したベンダーから「いかがでしょうか」とフォローのメールが入ると、返答に窮してしまいます。ここまでくると、提案書だけではなく、ベンダーそのものが的外れなのではないかと思えてきます。

内部のコミュニケーションが悪い

 ベンダー内部のコミュニケーションが悪いと、出てくる提案は的外れなものになります。

 例えば、元請けである親会社の営業チームが提案シナリオを作り、それを基に提案書の中身を作る作業をグループ子会社に分担させるような場合に問題が生じます。そうしたケースでは、グループ子会社のエンジニアは、元請けの営業チームからの伝聞情報を頼りに提案書を書くことになります。何か疑問が生じたとき、ユーザーに直接コンタクトできればまだいいのですが、ベンダー内部で伝言ゲームをしているような状態ではコミュニケーションギャップが生じて、情報がきちんと伝わりません。