第一コンピュータリソース(DCR)は、この10年間で全額出資企業をミャンマーに設立した唯一の企業だ。2008年に現地法人を設立し、国内IT企業として、いち早くミャンマーでのオフショア開発を開始した。ミャンマーDCR(MDCR)の社長であり、DCRの執行役員も兼務する赤畑俊一氏に、ミャンマーでの4年間の実績や課題を聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ



ミャンマーDCRの赤畑俊一社長
ミャンマーDCRの赤畑俊一社長

オフショア開発の拠点として、いち早くミャンマーに着目した経緯は?

 DCRとしては約10年前に中国にオフショア開発の拠点を作ったが、人件費が毎年上がり続けていることが課題になってきていた。中国の次のオフショア開発のエリアを本格的に探し始めたのは2006年。それから約2年がかりで、ベトナムやカンボジア、ミャンマーなどアジア地域の国々を調査。国民感情やインフラなど10項目程度の指標を各国で比較してミャンマーを選定した。

 ミャンマーは人件費などのコストが安いメリットがあるだけではなく、仏教徒で総じて人々の性格が穏やか。親日の国であることも重視した。国内市場が小さいため、大卒のIT人材の新卒の就職率が高くないことにも着目した。こうした状況であれば、新卒の極めて優秀なIT人材を採用しやすいと考えたのだ。

2008年7月の現地法人設立以降、どのように人員を増やしてきたのか?

 MDCRは現在、160人程度の社員がいる。IT系のトップ大学であるヤンゴン・コンピュータ大の卒業生など、毎年50~60人程度の技術者を採用してきた。2011年度は、それまで採用してきた人材の育成に力を入れたかったため一時的に新卒採用をストップした経緯がある。

 だが、既にDCRでのオフショア開発の9割をミャンマーで手がけており、ミャンマーのIT人材の稼働率はほぼ100%に近い。ここ1~2年はミャンマーでのオフショア開発の業務量が倍のペースで伸びているため、2012年度はまた50人程度を採用する方針だ。

ミャンマーではどのような開発業務を手がけているのか?

 プログラミングからテスト工程までがメインだ。日本での開発に比べて、同じ業務をこなすのにまだ1.5倍くらいの時間はかかるが、品質は日本とほぼ同等になってきた。

 これまで金融やサービス業向けの業務パッケージソフト開発などをミャンマーで手がけた実績があり、現在も10以上の開発プロジェクトがミャンマーで進んでいる。

ミャンマーにおけるオフショア開発での課題は何か?

 電力や通信インフラには課題がある。停電が頻繁に発生するので、オフィスには自家発電装置が必須だ。サーバーも毎日、終業時にはすべて落としてから帰る。PCもすべてノートPCにするなど、様々な停電対策をオフィスではしている。

 インターネットの速度も遅く、光ファイバーの通信サービスでも、実測は400kビット/秒程度しか速度が出ない。

 不動産価格の高騰も今後の課題になるだろう。オフィスや、駐在社員向けのアパートの賃貸料が毎年上がり続けている。

 意外に思われるかもしれないが、軍事政権がらみで困ったことは今まで特にない。