米Microsoft社は2012年6月6日、クラウドサービス「Windows Azure」の機能強化を発表した。新たにLinuxの仮想マシンを動かせるようになり、Windows Azure向けのアプリケーション開発ツール(SDK)でもLinux環境をサポートする。

 今回の機能強化で注目すべき点は、Linuxサポートが強化されたことだ。強化されたポイントは大きく2つある。

 1つ目は、クラウド上の仮想マシンに導入するOSとしてLinuxディストリビューションを選択可能になったこと。これまでWindows Azureでは、Windows Serverの仮想マシンだけ提供していた。今回の機能強化で新サービス「Windows Azure仮想マシン」を追加。そこで「Windows Server 2008 R2」や「Windows Server 2012(製品候補版)」が選択できるのは当たり前だが、他にも「openSUSE 12.1」「OpenLogic CentOS 6.2」「Ubuntu Server 12.04 LTS」「SUSE Linux Enterprise Server 11 SP2」と4種類のLinuxディストリビューションが選択可能になった(写真1)。

写真1 「Windows Azure仮想マシン」では主要なLinuxディストリビューションを選択できる
写真1 「Windows Azure仮想マシン」では主要なLinuxディストリビューションを選択できる
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 実際にUbuntu Server 12.04 LTSを試用してみたところ、独自の設定が施されていたり、独特な使い方が必要だったりするようなことはなかった。標準でリモート接続用の22番ポートだけが開放されている。これにより、SSHキーを作成して登録するだけで、仮想マシンの起動後にセキュアに接続できる(写真2)。

写真2 作成したUbuntu ServerにSSH接続でログインした画面
写真2 作成したUbuntu ServerにSSH接続でログインした画面
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 仮想マシンにマウントされるストレージは永続化され、標準で異なるデータセンター間で冗長化された構成になっている。このストレージの冗長化は今回の機能強化で標準装備になった。企業ユーザーが運用する上で心強い機能強化と言えるだろう。

 さらにWindows Azure仮想マシンでは、Microsoft社の仮想基盤「Hyper-V」で作成したVHDファイルを実行させられる。つまり、Microsoft社が用意した4種類のLinuxディストリビューション以外にも、ローカルのHyper-Vで動作を確認したLinuxディストリビューションを仮想マシンに実装できるわけだ。ただし、VHDファイルで導入したLinuxディストリビューションの動作については自己責任となる。

 強化ポイントの2つ目は、開発ツール「Windows Azure SDK」がバージョンアップし、LinuxやMac OS XといったWindows以外のOSにも対応したことである(写真3)。

写真3 「Windows Azure SDK」のCLIツールを実行した画面
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 Windows Azure SDKはクラウド上の仮想マシンを操作するための「CLIツール」と、「Windows Azureテーブル」や「同BLOG」などのストレージサービスにアクセスするための「クライアントライブラリ」で構成される。クライアントライブラリは対応するプログラミング言語ごとに用意されていて、.NET、Java、PHP、JavaScript(Node.js)、Pythonで利用可能だ。

 CLIツールを使うと、Windows Azureの管理者用ポータルサイトで操作可能なほぼすべての機能を、コマンドラインから利用可能になる。実際筆者が試したところ、CLIツールだけで仮想マシンの作成から設定、起動までを操作できた。