スマートフォンの普及により、PCなどの機器にも広がりつつあるのが各種の「センサー」だ。ここで言うセンサーとは、周囲の明るさや地磁気の方向など、周囲の情報を取り込むためのデバイス一般を指す。PCでは、プロセッサやマザーボードの温度管理などに使われてきた。しかし、スマートフォンでは、デバイス管理のためだけでなく、周囲の状況を把握して動作を変更するために使われている。

 例えば初期には周囲の明るさを検出して、バックライトの明るさを調整するようなケースが多かった。こうした場合、センサーはバックライトを制御する回路の一部となっていることが多く、メインプロセッサからアクセスすることができないため、デバイスが環境情報を得るためには利用できなかった。

 しかし、最近のデバイスでは、本体が横向きになると画面の向きを切り替えたり、スマートフォンで通話する際にタッチパネルを無効にしてバックライトを消したり、といった用途に使われている。また、地図ソフトと組み合わせて現在位置を表示したり、Google MapsのStreet Viewの表示を実際のデバイスの向きに合わせて切り替えたり、といったことが可能になってきた。

 こうしたセンサーデバイスには、のようなものがある。今回はスマートフォンに搭載されるセンサーの中から、加速度センサー、地磁気センサー、照度センサー、近接センサーについて解説していこう。

表●スマートフォンに搭載されるセンサーデバイスの例
分類 センサー名 測定対象
単機能
センサー
照度センサー 周囲の明るさ
近接センサー 液晶面が覆われているかどうか
加速度(重力)センサー デバイスの動き、姿勢
磁気センサー デバイスの向き(方位)
温度センサー 気温
圧力センサー 気圧
電圧センサー バッテリー電圧(充電状態)など
センサーの
ように
使える
デバイス
GPS デバイスの位置(緯度、経度)
カメラ 画像(顔やバーコード認識など)
NFC タグ検出
無線LAN アクセスポイントによる位置の検出
Bluetooth 無線によるデバイスの接続

モバイルデバイスを変えた加速度センサー、地磁気センサー

 モバイルデバイスの使い方を大きく変えたのは、「加速度センサー」と「地磁気センサー」だ。加速度センサーは、デバイスの「姿勢」、つまり縦向きか横向きか、机の上に水平にあるのか立てて手に持っているのか、などを検出するのに利用できる。地磁気センサーは、デバイスの向き、地球に対してどの方向を向いているのかを検出する。これにより、地図のような位置情報の表示を実際の向きに合わせるようなことが可能になった。

 加速度センサーは重力センサーとも呼ばれ、デバイスに対してくわえられた「加速度」(あるいは力)を測定する。地球上のすべてのものに対して、地球の重力がかかっており、これは、一般に「重力加速度」と呼ばれている。

図1●加速度センサーや地磁気センサーはデバイスのパッケージに対して3次元方向で測定する
図1●加速度センサーや地磁気センサーはデバイスのパッケージに対して3次元方向で測定する
デバイスが基板上に固定されており、スマートフォンなどをどう持つかによって、センサーデバイスの向きが違って来るため、3次元方向で計測しないと正しい加速度や地磁気の向きを測定できないからだ。出典はFreescale Semiconductorの「MMA7361LC」データシート。
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 物理的には、重力の加速度と、ものを動かしたときの加速度は区別ができない。このため、加速度センサーは、デバイスを静止させておいても、重力加速度を検出する。加速度センサーは、XYZの互いに直交する3次元方向(図1)の加速度を検出することができるため、加速度センサーに対して重力加速度の方向がどちらにあるのかを検出することで、モバイルデバイスと重力加速度の関係を把握できる。

 また、瞬間的な動きも検出することができるため、デバイスの加速度とその方向を継続的に測定していくと、デバイスの動きを追尾できる。このため、加速度センサーをジャイロセンサーと呼ぶこともある。