スマートフォンやタブレットは持ち歩くことが前提であるため、基本的に通信はすべて無線経由となる。PCなどでは有線のイーサーネットなどがまだ利用されており、その関係で持ち運ぶノートPCなどでもイーサーネットのインタフェースが装備されていることが多い。だが、スマートフォンやタブレットの場合、有線での利用はそもそも想定されていない。今回はスマートフォン/タブレットで使われる無線通信技術について解説する。

搬送波にベースバンド信号を乗せて送信

 無線通信では、送信する情報を表す信号を「ベースバンド信号」(基本波)といい、これで、通信する周波数の信号である搬送波(キャリアともいう)を「変調」して、搬送波にベースバンド信号を「乗せて」送信する。変調した後の信号である「変調波」は、アンテナから空間に送出される(図1)。

図1●無線通信の仕組み
図1●無線通信の仕組み
無線通信では、送信したい情報を含む信号を「ベースバンド信号」といい、送信したい周波数の信号である「搬送波」をこれで変調することで電波信号を作る。最後に必要な大きさまでこれを増幅し、アンテナから放射する。
[画像のクリックで拡大表示]

 例えばAM、FMラジオの場合には、音声の信号が「ベースバンド信号」、放送局に割り当てられた周波数を「搬送波」として使う。たとえば短波放送の「ラジオNIKKEI」第1放送は、3.925MHz(メガヘルツ)という周波数が割り当てられていて、これを搬送波の周波数として音声信号で変調する。

 変調とは、正弦波(サインカーブ)である搬送波をベースバンド信号を使って「ゆがませて」ベースバンド信号の情報を運ぶようにする。この方式は様々でラジオのAMやFMはこの変調方式の一つだ。分かりやすいAM(振幅変調)では、搬送波の大きさ(波の高さ)を音声信号と同じように上下させる。これらはアナログ通信技術だが、コンピュータの通信ではデジタル信号をベースバンド信号とし、もっと複雑なデジタル通信用の方式を利用する。

 携帯電話などではCDMAと呼ばれる通信技術が使われている。CDMA技術は、デジタル技術を使い、同一の周波数で複数の通信を可能にする技術だ。大半の部分をデジタル処理する必要があるが、周波数帯を複数のチャンネル(チャネル)に分割する従来のデジタル方式の携帯電話よりも多くの端末を同じ周波数帯で利用できるようになるなど特徴があり、3Gの通信技術の基本となる通信方式だ。

 簡単にいうと、送信する1ビットを複数のビットパターンで表現する。そのビットパターンは数学的な性質から、重なっても後から分離できる。また、端末自体は、単一の周波数帯に対応すればいいため、アナログ部分が簡易になり、送受信の周波数を切り替えるなどの機構が不要になる。