by Gartner
クリス・ハワード マネージングVP
ダリル・プラマー マネージングVP&ガートナー フェロー
山野井 聡 ガートナー ジャパン リサーチ部門代表

 今、コンシューマITにおける四つのパワフルな力「ソーシャル」「モバイル」「クラウド」「インフォメーション」が、互いの結びつきを強めている。これらが結びつく「力の結節」は、ユーザーの行動を変えるとともに、企業に新たなビジネスチャンスをもたらそうとしている。

 ソーシャルやモバイルといった四つの力は、元々は独立に発展してきた。スマートフォンの普及などによってユーザーの行動様式が変化することで、この力が結び付くようになった。 

 例えば、ユーザーがブログやつぶやき、写真や映像という形で生成する豊富なインフォメーションは、ソーシャルやモバイルを通じた体験の質を高めている。

 FacebookやTwitterといったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は、スマートフォンなどモバイルの主要なアプリケーションとなった。加えてSNSは、一人では処理しきれない大量のインフォメーションを整理し、「この人が見ているから、私も見たい」という新たな価値を与えた。

 クラウドはそれらのプラットフォームである。インフォメーションやサービスにいつでもどこでもアクセスできる基盤を提供し、サービスの収益化に貢献する役割を果たしている。

 このように四つの力が結びつく「力の結節」を、革新的な製品やサービスの開発、あるいは従来の文脈とは異なる新たな顧客と接点を持つために、先進的な企業は活用している。

 ユーザーの行動や感情、経歴、行動範囲、思想といったインフォメーションの背後にある繊細な関係性を理解する。その上で、自社のビジネスモデルやシステムのアーキテクチャーを、「力の結節」に巧みに適応させている。

 先進的な企業が「力の結節」を上手に活用しようとしているのに対し、それができない旧来の企業は、ビジネスモデルやITをこの流れに適応させるのに苦労している。旧来型の情報システムが、「力の結節」がもたらす新たなビジネスチャンスを捉えることを阻害する要因になっているのだ。

 企業が持つ情報システムは、これまで企業のための要件や機能を定義し、顧客に提供するものだった。今日、ITが消費者一人ひとりに広く行きわたる、いわば「ITの民主化」が進んだことで、ITの決定権は企業から個々のユーザーに移っている。硬直的なシステムは、ユーザーがITの決定権を持つ時代には適応できない。

 CIO(最高情報責任者)やIT部門は、洗練され創造的で、ときに企業の裏をかくユーザーの要望に対し、自社のITシステムが応えられるかどうか、自問自答する必要がある。先に挙げた「力の結節」を使いこなすための、変革が求められている。

 ソーシャル、モバイル、クラウド、インフォメーションという四つの力は、互いに作用し合うことで、現在では複雑な依存関係を形成している。そして「力の結節」のなかに、新たなビジネスチャンスがある。

 「力の結節」を使いこなすため、企業はシステムのみならず、スキルや物の見方を変える必要がある。この流れを無視する企業は、この好機を捉えた企業に早晩、市場から追い払われることになるだろう。