国民一人ひとりに番号を割り当てる「マイナンバー」の関連法案で、与野党が合意を目指す修正ポイントが明らかになってきた。民主、自民、公明の3党で制度創設に深く関わってきた議員らは水面下で意見交換を続け、2012年7月下旬には「大筋で合意できそうな感触」(3党の議員)を得ていた。

 その後の国会運営を巡る混乱などを受け、8月7日時点で3党は正式な修正協議に入れずにいる。法案の成立時期も不透明だが、国会が正常化すれば次のような修正を盛り込む公算が高い()。

表●民主、自民、公明3党で議論されるマイナンバー関連法案の修正点
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 第1のポイントは、政府内で省庁を横断したシステム調達能力を高めることだ。このために主に二つの修正が検討されている。一つは、政府が今夏にも設置する新ポスト「政府CIO(最高情報責任者)」が、「マイナンバー関連システムの調達を担当する」と明記すること。もう一つは、マイナンバーの運用を監視する「個人番号情報保護委員会」の権限をさらに強化し、システムの調達や構築を監視する役割も担わせることだ。

 政府CIOと保護委員会の役割は「政府CIOが執行、委員会がその監督と見れば分かりやすい」(民主党の三村和也衆院議員)。

 マイナンバーでは、内閣官房や国税庁、総務省など、既存システムの改修も含め多くの省庁がシステム調達に関わる。政府CIOはこれら全ての調達手続きに関わることで、システムの全体最適を図ったり、ベンダー選定方法などを改善したりして、調達の失敗や非効率を防ぐ狙いだ。さらにこの過程を保護委員会が監視し、問題点の改善を求めるという2段構えで改革を後押しする。

 第2のポイントは、マイナンバーを使う際の本人確認手段を、ICカード以外にも広く用意することだ。具体的には、携帯電話など様々な情報機器を本人確認などに使える技術を検討する、番号を記載した簡易的な「仮カード」を全国民に郵送するという二つの修正案が浮上している。

 狙いは、ICカードの普及を優先させる「国民総ICカード」構想の否定だ。現行の政府案でもICカードは希望者だけに発行する方式だが、総務省はカードの無料化を検討するなど、国民全体への配布を目指す。これが「カードの予算を利権化し、不便な方式にこだわる総務省」(自民党の平井卓也衆院議員)と映る。民主党も同様の提言をまとめていた。

 仮カードは、厚紙にマイナンバーや氏名などを記載するといった簡素なものになりそうだ。それでも役所の窓口での手続きなどに限れば、運転免許証などと併用することで本人のマイナンバーを確認する用途では十分という。

 携帯電話などを本人確認に使う技術方式は今後の検討だが、実現すれば国民の利便性は高まる。行政手続きの電子化にもプラスに働きそうだ。