サーバー仮想化の次は、ネットワークの仮想化。米ヴイエムウェアと米マイクロソフト(MS)というサーバー仮想化の大手が、ネットワーク仮想化の主導権を巡って、米シスコシステムズに挑み始めた。

 MSは2012年10月に出荷する新サーバーOS「Windows Server 2012」で、ネットワーク仮想化機能を大幅に強化する。ヴイエムウェアは7月23日、ネットワーク仮想化ベンダーの米ニシラを12億6000万ドルで買収すると発表した。MSやヴイエムウェアが狙うのは、ハイパーバイザーに組み込む「仮想スイッチ」を使ったネットワーク仮想化だ()。

図●仮想スイッチの役割と主なベンダー
「VLAN」のような仮想的なネットワークを仮想スイッチを使って実現する
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 仮想スイッチは、ハイパーバイザーと連携して、仮想マシン間の通信を制御する。この仮想スイッチを使い、物理スイッチにおける「VLAN(仮想LAN)」のような仮想的なネットワークを構成し、仮想マシンが所属するネットワークのセグメントを分割する。さらに、L2のフレームをL3のパケットにカプセル化するトンネル通信を仮想スイッチ間で行うことで、仮想ネットワークの範囲を異なる物理サーバー上にも広げる。

 VLANは、物理スイッチ上で実現していた。そのためサーバー管理者は、仮想マシンに必要なVLANを設定する際に、ネットワーク管理者に物理スイッチの設定変更を依頼する必要があった。

 仮想スイッチを使ったネットワーク仮想化を最初に実現したのは、シスコだ。シスコがヴイエムウェアの「vSphere Hypervisor」向けに提供する「Nexus 1000V」という仮想スイッチは、「VXLAN」という方式のトンネル通信機能を備える。

 MS のWindows Server 2012では、「Hyper-V 3.0」が内蔵する仮想スイッチが「NVGRE」というトンネル通信機能を備える。

 ヴイエムウェアが買収を発表したニシラのソフト「Network VirtualizationPlatform(NVP)」を使うと、オープンソースの仮想スイッチ「Open vSwitch(OVS)」間で「STT」というトンネル通信ができる。OVSはオープンソースのハイパーバイザー「Xen」や「KVM」が採用する。シスコ方式の仮想スイッチを開発中のヴイエムウェアだが、ニシラ買収で独自ソリューションも手に入れた。

 VXLAN、NVGRE、STTという三つのトンネル方式には互換性は無い。今後、シスコ、ヴイエムウェア、MSの3社による、独自のネットワーク仮想化ソリューションを軸にしたユーザーの囲い込みが始まりそうだ。