ロンドン五輪での日本選手の活躍で久しぶりにテレビ広告市場に活気も戻ってきたところ。今回は、液晶テレビやAVアンプ、ブルーレイディスクレコーダー(BDレコーダー)などハードウエアをソニー製品で統一した上で、Android4.0にバージョンアップした同社タブレット端末「“Sony Tablet” Sシリーズ」の使用テストを行った(写真1)。

1つのIDでどの端末からもアクセスできるサービスを少しずつ具体化

写真1●Tablet Sはソニー製のデジタルAVアンプやAnyMusicコンポなどを制御するアプリの使い勝手が良い
写真1
Tablet Sは、ソニー製のデジタルAVアンプやAnyMusicコンポなどを制御するアプリの使い勝手が良い。BDZ-SKP75の上に往年のソニー製スカパーSD受信機も設置・操作してみた。
[画像のクリックで拡大表示]

 AV事業が不振のソニーにとって、携帯電話機やタブレット端末などのモバイル機器、VAIOブランドで展開するパソコン、さらにはプレイステーション 3(PS3)やプレイステーション・ポータブル(PSP)といったゲーム機器など、様々な端末を対象にコンテンツを効率的に配信し消費してもらうことは喫緊の課題である。そのためにIDシステムをSONY Entertainment Networkアカウントとして再構築した。1つのユニークIDでどの端末からもアクセスできるサービスが少しずつ具体化してきている。平井社長はそのイメージを「ONE SONY」と名づけている。既に、筆者はPS3およびソニーの液晶テレビ「BRAVIA」での配信サービスに対応するために、同アカウントを2012年4月に取得していた。

 Androidのバージョンを4.0にアップしたSony Tablet Sは、アプリの動作が全体的に速くなった。特に、YouTubeやソニーの「Video Unlimited」(Music Unlimited powered by Qriocityから改称)のアプリ上での動画再生は、元ソースが良ければかなり滑らかな画質が保たれていると感じた。HuluやTSUTAYA TVも快適に動作するが、これらは月額980円の定額制サービスを提供し始めている。ケーブルテレビやNTTぷららによるVODサービス、そしてNHKオンデマンドも月額千円を基準にしてきている昨今、Video Unlimitedは作品数がそれ程の量でもなく定額制も採用されていないといった点が気になった。定額性と違い好きなときに使えばよいという手軽さはあるが、「Unlimited」という名前に相応しい使い放題の料金体系も用意してほしいところだろう。また、ソニーならではの独自コンテンツの調達などが課題と感じた。

 一方音楽では、先頃配信がスタートしたばかりの月額1480円で提供される「Music Unlimited」を使った。現在、品揃えでは邦楽の人気作はほとんど見受けられないが、洋楽は筆者(1960年代生まれ)の年代でも馴染みのあるアーティストばかり。テスト用の無料視聴が各曲30秒だったのでじっくり聴きたい筆者は迷わず契約した。マイプレイリストに入れたアルバムは20枚ほどだが、iPadでiTunes storeからアルバムを購入する場合と違い、料金を気にしなくていい定額制の世界はかなり魅力的である。

 ソニーの普及型ヘッドホンをSony Tablet Sに接続して聞いたが、音質については聴きこむとデジタル圧縮特有のサ行のきつさや、ハイハットを叩く時のシャリシャリ音が多少耳につく場合もある。ただしSony Tablet Sで音楽を聴く場合は、ながら試聴やミニコンポへの接続などが主要なユースケースであろうから、多彩な洋楽を手軽にコレクションするという当初の目的は達成できたと感じた。

 なお、試しに同一のヘッドフォンで同一の音源を、NTTドコモの今夏モデルであるdocomo with series Xperia SO-05DでもUnlimitedを用いて試聴してみた。音量を上げなければ十分に試聴に耐えうると感じた。なお、このサービスはマイリストの楽曲をダウンロードすれば、電波の途切れた環境でもオフラインモードで試聴できるという特徴がある。こういった定額制音楽配信サービスが本格化する一方、ソニーは楽曲ダウンロード配信サービスであるAnyMusicを2013年1月で終了するアナウンスを行っている。