これまで説明してきたように、憂鬱感やストレスの原因は以下の2つに大別される。

1 外的要因…経済環境、経営環境、技術環境の変化に伴う将来への不安のストレス
2 内的要因…価値観、意識、思考の変化に伴う人間関係のストレス

 そこで今回からは、ソフトウエアエンジニアの憂鬱感を取り除き、ストレスを少なくする基本的な考え方と具体的な行動や施策を紹介していく。まず今回と次回の2回にわたって、外的要因への対策を紹介しよう。

外的要因の具体的な変化の認識

 まず我々(組み込みソフトウエア開発業者)が前提として認識しなければいけない社会の変化について改めて簡潔に整理しておく。

(1)世界の経済は停滞状態にある。これは一過性のものではなく、急激な人口増加による資源不足と、米国の住宅バブル崩壊などによるデフレ経済の進行という構造上の問題によるもので長期化は避けられない。

(2)日本の経済全体を牽引してきた製造業は新興国の価格競争力や技術力に追い上げられ苦境に陥っている。新興国での市場開拓に成功し業績を伸ばしている例外も一部のサービス関連企業には見られるが、開発部門や製造工場の新興国シフトは加速し空洞化は避けられない。

(3)ものづくりの軸足がハードからソフトに移行するなか、人々の生活を変えるIT活用が開花していく。農業や水産業の技術革新、資源開発/省資源といったエネルギー関連市場、生活の利便性向上や介護・医療、新たな娯楽など。

(4)世界のITエンジニアの人数は今後も急増傾向にあるが、中国やインドなどの新興国出身者がIT業界の中核になり始めている。エンジニアの就労におけるボーダーレスも広がる。

 なお、(4)について補足すると情報サービス産業協会(JISA)によると日本における2015年の高度IT人材の就業人口は、中国やインドの2割程度と予想されている(図1)。

図1●2015年の高度IT人材規模(予測)
図1●2015年の高度IT人材規模(予測)

 また、米ワイアード誌の2008年の記事によると、当時既に米クアルコムでは同社が採用する大卒者の60%が外国籍の留学生であり、シリコンバレーのITを支えるエンジニアの半数がインド人や中国人だという。

 デフレ経済は、賃金を減らし、企業の開発予算を減額し、教育研修の費用を圧縮した。企業はエンジニア確保の手段を育成から調達へと発想を切り替えている。オフショア開発も加速するだろうし、社内のIT構築や運用業務も外部委託が進む。

 こうした変化をなんとなく肌で感じて、漠然と不安には思っている国内のエンジニアは少なくないだろう。日本でITエンジニアが不要になるわけでも、未来がないわけでもないが、今のままでは日々の不安は募るばかりだ。この漠然とした不安を何とかしなければ、ストレスを減らし、メンタルシック(心の病)を遠ざけることはできない。

 本来なら、会社のサポートを期待できないなかで、自分自身で成長計画を立案し、自分への投資費用を捻出しなければならないが、日々の仕事に追われてなかなかアクションを起こせないのが現実だろう。家族の扶養責任なども背負っていれば、進路変更には二の足を踏むのが当たり前だ。