勝者不在と言われるテレビ業界で、何が起こっているかを解説した良書。製造原価の7割を占めるパネルの競争からLSIによる高画質化競争を経て、今後はスマートテレビが新たな競争の舞台となる。だがスマートテレビに厳密な定義はなく各社が手探りの状況。本書を読んでも答えは分からないが、方向性やヒントは見えてくる。

 ベタな例ではスマートフォンやタブレットとの連携、ソーシャルサービスの取り込みにはじまり、煩わしいリモコン操作をなくしたモーション操作、あらゆる番組を録画して予約の概念をなくした全録型レコーダーなど様々な取り組みが進んでいる。ただ本書が指摘する通り、テレビは買い替えサイクルが長い。最新技術や機能の取り込みではどうしても不利になる。スマートテレビは外付けレコーダーやゲーム機などで実現したほうが費用と機能の両面で効率が良く、勝者は別のプレーヤーになるような印象を受けた。

スマートテレビ

スマートテレビ
西田宗千佳著
アスキー・メディアワークス発行
780円(税込)