スウェーデンにあるソニーモバイルコミュニケーションズの開発拠点を徹底取材した。同社のユーザー体験/ユーザーインタフェースの専門家らへの取材を通じて、スマートフォン「Xperia」の開発アプローチに迫る。第3回は、同社インダストリアル・デザインのアートディレクターである隅井氏とシニアデザイナーの山岸氏に聞く、「製品設計にこめられたストーリー」である。


写真1●インダストリアル・デザインを担当する隅井氏(左)と山岸氏(右)
写真1●インダストリアル・デザインを担当する隅井氏(左)と山岸氏(右)
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 隅井氏と山岸氏は、ソニーモバイルコミュニケーションズ製プロダクトの外観デザインを担当する(写真1)。中長期の製品のブランディングを担っており、「大きなコンセプトだけでなくディテールまで作っている」という。

 ソニーモバイルコミュニケーションズは、親会社のソニーとは別会社ではあるものの、デザインチームとしては相互にコミュニケーションを図っている。ソニーとしてのブランドイメージを保つためだ。

ストーリーを重視

 隅井氏と山岸氏によると、Xperiaなどのスマートフォンとほかのソニー製品との違いは、ビジネスの枠組みに依存するところだという。つまり、スマートフォンの場合、直接の購買者である通信事業者と、最終的な購買者であるエンドユーザーのバランスを考える必要がある。通信事業者の意向も取り入れる必要があるが、その意向に依存し過ぎるとメーカーとしての独自性がなくなってしまう。

 そこで、スマートフォンのデザインにおいては「ストーリー性」を持たせることで、一貫したテーマを続けていることを通信事業者にも理解してもらっているという。

 同社がストーリーを描く際にまず考えるのは、世の中のグローバルトレンド。そこから、キーワードを抽出し、デザインやエクスペリエンスの要素を取り入れながら、製品のあるべき姿を作り上げていく。社内に複数のワーキンググループを作り、一つの声にまとめていくのだという。同社ではこの作業を「デザインテリジェンス」と呼んでいるという。