スウェーデンにあるソニーモバイルコミュニケーションズの開発拠点(写真1)を徹底取材した。同社のユーザー体験/ユーザーインタフェースの専門家らへの取材を通じて、スマートフォン「Xperia」の開発アプローチに迫った。第1回は、同社エクスペリエンス・プランナーである石田氏に聞く、「自然な対話」「アジャイル開発」「北欧流デザイン」などである。


写真1●スウェーデンの学園都市ルンドにある、ソニーモバイルコミュニケーションズの開発拠点
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 石田氏は、最近よく使われる「ユーザー・エクスペリエンス」(ユーザー体験)の企画者である。その石田氏が興味を持っている技術の一つが、ナチュラル・インプット(自然対話)だという。マウスやキーボードを使わず、しかも画面に集中することなく、自然な対話や動き、表情、視線、心拍数などでスマートフォンやコンピュータに入力できないかという議論を、社内で繰り返しているというのだ。この分野は、かつてソニーが開発したロボット「AIBO」に実装されていたが、「まだまだ深堀りされていない分野」(石田氏)という。

 石田氏によると、そもそも人同士のコミュニケーションの要素は、

  • 見た目
  • 会話
  • ジェスチャー
  • 空間

に分解できる。これらの要素の多寡によって、コミュニケーションの幅が変わってくるというだ。「こうしたいろいろな要素があって、初めて自然な会話が成り立つ」(石田氏)。

 スマートフォンの開発者としては、こうした要素をプラットフォームとして定義し、サードパーティに開放することを考えているという。何らかのAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を用意することにより、サードパーティによるクリエイティブで自然なコミュニケーションサービスの開発を期待しているのだ。

 前述の要素のうち、現在のスマートフォンではジェスチャー以外の要素はほぼ満足のいくレベルで実現できているとみている。ジェスチャーについても、内蔵カメラの性能が上がり、「笑顔度」を読み取る機能も実現されているため、一定の水準に達していると認識しているようだ。

 石田氏は、先に挙げた複数の要素を読み取って、スマートフォンのアプリから「疲れているの?」「怒ってる?」などと話しかけてくれるサービスも実現できると考えている。ユーザーからすれば、「このサービスは、私のことを分かってくれている!」と思えるようなサービスが実現されるのだ。