最近、SNSやオンラインゲームで世界中の人たちとコミュニケーションをとったり、いろいろな言語のWebサイトをチェックするなどの用途で、機械翻訳(マシントランスレーション、自動翻訳)に対する注目度が上がっています。また、ビジネスのグローバリゼーションを推進していく上でも、機械翻訳による効率化が注目されています。

 まずは、興味深い具体例を2つ紹介します

 奈良市観光協会が、今春更新した外国語版のホームページ(HP)に、多くの誤訳があるとの指摘を受け、HPを一時閉鎖していたことがわかった。

 経費抑制のためインターネットの自動翻訳システムを使ったためで、「国際観光都市として恥ずかしい限り」と担当者は平謝りだ。

 寺社などを紹介すHPは今年3月に更新され、従来の英、韓、中、仏語に、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語、イタリア語のページを追加。この際、1言語150万円だった翻訳の外部委託をやめ、全部で35万円の自動翻訳システムに変えた。

 例えば英語では、東大寺の「大仏」を姓と認識して「Mr.Osaragi(ミスター・オサラギ)」と翻訳。「仏ほとけの慈悲」は「French mercy(フランスの慈悲)」とした。「平城京へ都が遷うつされた」では、訳せなかった「遷」の字が英文に交じっていた。誤訳は「数え切れないほど」あり、観光ガイドらからの苦情を受け、協会は現在、更新前のHPを公開している。

(2012年5月28日 読売新聞)

 東日本大震災からの復興を支援する国のキャンペーン「東北観光博」の公式ホームページの英語、中国語、韓国語版で誤訳が多数見つかり、管理する観光庁は日本語以外のホームページを一時閉鎖した。自動翻訳機能ソフトを使ったため固有名詞が直訳されたといい、訂正して今月下旬に再開する予定としている。

 誤訳の例として、歌人の石川啄木の法要「啄木忌」は「Woodpecker mourning」(キツツキ喪)▽秋田県の生保内(おぼない)関所跡は「Barrier trace in life insurance」(生命保険における関所跡)▽秋田は「tired」(飽きた)-など。仙台市の「旧伊達邸」はローマ字表記で「きゅういたつてい」に。秋田県男鹿市の伝統行事「ナマハゲ」に至っては中国語で「はげ頭病」の意味になり、秋田県だけで30カ所以上あった。

 観光庁はホームページ上に「機械翻訳によるもので100%正確なものではない」と注釈をつけたが、日々の閲覧数が1万回を超えるようになった今月以降、誤訳の指摘が相次いだ。

 秋田県は「観光はイメージで左右される。しっかりしてほしい」、宮城県は「復興に向けた大切なイベントなのに、あまりにレベルの低い間違いだ」と批判。観光庁は一時閉鎖を謝罪し「見つけるたびに直してきたが、作業が追い付かなくなった」としている。

(msn産経ニュース 2012.4.14)