長野県佐久市で、ITによる情報発信を目的とする事業組合「さくりすITサポート」は2012年7月中にも、同地区の岩村田本町商店街の広告や、行政情報、地域のイベント情報を配信する「あさまチャンネル」を開始する。

 この事例は、2012年6月13日に幕張メッセで開催されたデジタルサイネージジャパンの専門カンファレンスにおいて「地域型マルチスクリーン」というコンセプトとして紹介された。

 特徴的なのは、いわゆる街角に設置する大型サイネージを、あくまで全体の一部として位置づけていること。商店街や公共施設に設置した大型サイネージの他にも家庭に置くタブレットを使ったホームサイネージ、パソコンで閲覧可能なブログポータル、地域の大型チェーン店舗であるイオンのサイネージ「イオンチャンネル」、スマートフォン向けロケーションサービスとの連携、など様々な端末のスクリーンを対象に情報を配信する。

 コンテンツを生成するという面でも、様々なITツールを連携させることで低コスト化を図り、助成事業ではなく、収益事業として成立させる目標を掲げている点も特徴的な事例である。

地元の大型店舗のサイネージと連携

 あさまチャンネルをスタートさせるきっかけとなった岩村田本町商店街は「2011年度の『あしたのまち・くらしづくり活動賞』で内閣総理大臣賞に表彰されるなど、地域活性化に対する意識が高かった(商店街の振興組合Web担当理事IT推進担当の半田かつ江氏)」という。

 ただしその取り組みは「商店街の通りを使って、日本一長い米粉ロールケーキや草餅を作る、といった一過性のイベントに頼ったもので、イベント終了後に商店街に人を引きつける、といった効果が薄かった」(半田氏)。イベント頼りでなく、より継続的に人を商店街に引き寄せるには、地元の買い物の中心になっている「イオン佐久平店」と商店街の間で人を行き交いさせることが必要と考え、商店街サイネージと、イオン店舗内のサイネージ「イオンチャンネル」を連携させるアイディアが生まれた。

 元々地元の商店街とイオンの間では、相互に協力する関係ができていた。その仕掛けになっているのが、イオンが発行するご当地電子マネー「佐久っ子WAONカード」である。商店街の支払いでもイオンでの支払いでも買い物時に現金として使えるポイントが貯まる。

 ここにさらに、地域関連情報のブログをまとめたブログポータル「あさま日和」がコンテンツとして参加することになった。地域情報を街角でもイオンでも配信し、さらにWAONカードを同ブログポータルの会員証として発行することで、ブログポータルのコメント権限を付与する。ブログポータルの固定ユーザーは約600名の規模であり、佐久っ子WAONカードの会員獲得にもつながる。このようにサイネージを軸に、ブログ、電子マネーも含めた連携ができることになった。