前々回前回で、「自分に集中しないと仕事が終わらない」「他人に関わらないと、状況はより良く変わっていかない」というジレンマに触れてきました。私たちの回りには、こうした根深いジレンマがあります。今回と次回は、このジレンマを解きWin-Winを実現する、TOC思考プロセス流の解決策の作り方を紹介していきましょう。

 前回で、人間の行動を因果関係で捉え、「行動を決めているのは価値観と行動基準である」と説明しました。ジレンマを根本的に解消するためには、対立している行為そのものだけに焦点を絞っても、根本的な解決策は見つかりません。ジレンマとは「同時に実行できないこと」であり、目の前の選択肢に対して右か左かだけを声高に言い立てても何の解決策にもならないのです。

 そこで「クラウド」(別名「対立解消図」)を活用します。五つのボックス(箱)と矢印で構成され、ボックスAはBとCの共通目標です(図1)。

図1●対立解消図(クラウド)の例
図1●対立解消図(クラウド)の例

 BはAに対するニーズ(必要条件)です。従ってBなしにはAは存在できません。また同じように、CなしにはAは存在できません。そう考えるとB、Cのボックス両方が(A)目的を達成するための2つの必要条件であることが分かります。