前回は、仕事がうまくいかない原因として「自分に閉じる」ということについて考えてきました。 自分に閉じ過ぎてしまうと、自分から発信ができず、受け手と送り手のコミュニケーションが成り立たなくなってしまいます。

 このような思考のボトルネックから抜け出すのに必要なことは、相手と会話のキャッチボールをしながら、自分の行動によって相手がどう反応するか、行動するかを考えて行動できるようになることです。

 相手の行動を予測して自分の行動を変えられるようになれば、皆さんの対人スキルは見違えるように向上するはずです。そうして読者の皆さんにはぜひ、「自分に閉じずに、人に働きかけてお互いの行動を変えていく」人材になっていただきたいと思います。

 そこで今回は、相手の行動を予測できるようになるために必要な「物事をつながりで見る」ことについて考えていきましょう。

人間の行動は予測可能である

 相手の行動を予測するってそんなに簡単なの?と思われるかもしれませんね。でも心理学的な素養がなくとも、ある程度は人間の行動は予測できます。簡単な例で考えてみましょう。

 例えば仕事がどうやっても終わらない状況に陥ったとき、あなたはどうしますか?終わらない原因が自分のミスや不手際であるならば、徹夜をしてでも必死で作業をするでしょう。あるいは世話になっている上司の頼みであれば、徹夜まではしないまでも、できる限りの協力をするでしょう。

 一方で、プライベートの勉強会があるような場合は、今日はこれまでと割り切って、そちらを優先するかもしれません。

 このように「仕事が終わらない」という問題(原因)からも複数の結果が生まれます。こうした違いはそれぞれの背景にある「理由(なぜならば)」によるものです。

 人間が何か行動を起こす場合、何らかの「理由」があり、その理由の裏側にはさらに「大きな理由」があります。先ほどの例で考えれば「徹夜してでも仕事を終わらす」理由は「無責任なヤツと思われたくない」ということかもしれません。もちろんそれ相応の別の理由ということもあるかもしれません。

 皆さんは「因果」という言葉をご存じだと思います、自然科学における因果の考え方は、「すべての事象には原因があり、原因がなければどんな現象もおこらず、ある事象は一定の条件のもとで、別の事象を引き起こす」ということです。例えば「水は100度になれば必ず沸騰するし、零度以下になれば凍る」などがその例に当たります。

 実は、取り巻く事実や背景を明らかにすれば、人間の一般的な行動もかなりの確率で解明できるのです。従来この因果の考え方は、感情を持った人間の問題解決に応用することは難しいと考えられてきました。けれども残業の例でもお分かりのように、人間の日常行動は感情や直感だけで決まるわけではありません。