あまり知られていないが、筆者が以前在籍していた広報エージェンシーのバーソン・マーステラでは、2010年から年1回の頻度で「グローバル・ソーシャルメディア・チェックアップ」という調査を実施している。筆者自身も2011年に実施した第2回の調査で、日本のリード・デジタル・ストラテジストとして、この調査に携わった。その調査の2012年度版に関する結果がつい最近発表されたので、今回は、それを紹介しよう。

世界のトップ100企業のソーシャルメディア活用状況を分析

写真1●バーソン・マーステラがグローバル100社を対象に調査したソーシャルメディア活用の分析レポート
写真1●バーソン・マーステラがグローバル100社を対象に調査したソーシャルメディア活用の分析レポート
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 この「グローバル・ソーシャルメディア・チェックアップ」とは、毎年バーソン・マーステラが独自に行っている調査である。全世界の主要な企業をピックアップし、これらの企業のソーシャルメディア活用がどのようなものになっているかを細かく分析し、まとめあげたものだ。

 調査対象企業は、基本的にフォーチュン・グローバル100社となっている。そのため、いわゆる世界的に見た大企業がソーシャルメディアをどのように活用しているかが手軽に把握できるようなものになっている。記述は英語のみだが、レポート自体は誰でもオンラインで手軽に閲覧できるので、機会があればぜひ目を通していただきたい(写真1該当サイト)。

 3回目の調査ともなってくると、さすがにだいぶこなれてきた印象がある。筆者自身が携わっていた前回からはわずか1年だが、そのときと比べても既に大きく変わった感じがする。特に、昨年、そして一昨年の前々回との比較が随所に見られるため、変化をリアルに感じることができる点で、今年の調査結果に関しては非常に興味深い調査結果になっている。

 具体的には世界的に見ても、この2年間で企業のソーシャルメディア活用は非常に普及しているということがわかる。

着実に進む企業のソーシャルメディア活用を数字で裏付け

 調査結果の中でも、2010年を「大企業がソーシャルメディアを活用し始めた年」として位置づけている。そこから様々な試行錯誤が行われた上で、2011年は「大企業がソーシャルメディアを活用し、顧客との関係性を構築し始めた年」という形に変わってきている。まず注目したいのは、世界的に見ると、企業はソーシャルメディアを情報を拡げるためのものとして位置付けるよりは、むしろ積極的に顧客との関係性を構築し、維持するためのものとして考えているという点だ。

 さらに企業が重視しているのが「ソーシャルメディア上で自分たちの企業がどのような形で語られているか」という部分である。今回の調査結で対象となった100社に関連する、1カ月間の全ソーシャルメディア上の言及量(ツイート数やポスト数など)は、のべ約1040万にも及ぶと発表されている。この数字からもわかるとおり、ソーシャルメディア上から発せられる声が無視できない規模になりつつあるのだ。

 ちなみに、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)ごとの1社あたりの平均で考えると、Twitterが1カ月に5万5970回と一番多いようだ。一方、Facebookは1カ月に4606件とやや少ない数字となっている。もちろん、調査の際に用いたツールの特性や、TwitterとFacebookそれぞれの検索性も踏まえて考えなくてはならないため、この数字をそのまま鵜呑みにするのは危険である。とはいえ、大まかな傾向は把握できるだろう。

 なお、ソーシャルメディア上で多く言及されている企業上位10社のうち、日本の企業が3社含まれているところも興味深い結果である。